技術士試験講座





(2016.06.05 更新)

総合技術監理部門 (2)択一式問題勉強法

(本ページは総監の択一式問題についてのみ記載しています。)

           総監の口頭試験は こちら

           総監以外の口頭試験は こちら


技術士試験総合技術監理部門キーワード事典2010年版

1. 筆記試験の重要性


 総合技術監理部門(以下、これを「総監」と称します。)の技術士試験においては、言うまでもなく、筆記試験が大変重要です。
 これについては、総監以外の部門(以下、これを「一般部門」と称します。)の筆記試験のそれと同じであるため、「技術士第二次試験講座 (2)筆記試験合格法」の 1 に記載してあるので、そちらを御覧ください。

2. 本ページが網羅する範囲


 「技術士法施行規則」は、総合技術監理部門の筆記試験は必須科目と選択科目から成るが既に他部門の技術士となる資格を有している場合は選択科目が免除されるとしています(第 11 条、第 11 条の二)。また、実際、総監を受験される方の多くは既に一般部門の技術士資格をお持ちです。これらの事情を勘案し、総合技術監理部門講座においては選択科目については割愛し必須科目についてのみ記載します。
 「技術士試験の概要」の 2 は、必須科目の「問題の種類」は「「総合技術監理部門」に関する課題解決能力及び応用能力」であり、その内訳は「択一式」、「記述式」の 2 つであるとしています(2.、(1) の項)。そのうち、「記述式」(以下、これを「記述式問題」と称します。)の留意点については 「総合技術監理部門講座 (3)記述式問題の書き方」に記載します。そのため、本ページでは総監の「択一式」(以下、これを「択一式問題」と称します。)の留意点についてのみ記載します。

3. 択一式問題

3.1「総監の技術体系」の理解

 「技術士試験の概要」の 3 は、総監の必須科目の合格基準を択一式問題と記述式問題の合計で 「60 % 以上の得点」としています(II、1.の項)。したがって、例えば次の (a)〜(c) のいずれもが合格になります。
         (a) 択一式の得点 40 点、記述式の得点 20 点、 計 60 点
         (b) 択一式の得点 30 点、記述式の得点 30 点、 計 60 点
         (c) 択一式の得点 20 点、記述式の得点 40 点、 計 60 点
 つまり、(a) でも合格だということです。これは、 1 言で言えば、「既に他部門の技術士をお持ちの方であれば、「技術士制度における総合技術監理部門の技術体系(第2版)(公益社団法人日本技術士会 2004)」(こちら)(以下、これを「総監の技術体系」と称します。その表紙が青色であることから「青本」と呼ばれている書籍です。)さえよく分かっていれば合格にしますよ。」と言っているのにほぼ等しいということです。つまり、総監においては「総監の技術体系」が決定的に重要であるということであり、「総監の技術体系」を理解させるために総監は設けられているということです。
 ここで問題なのは、 (c) です。記述式問題の解答は、どんなに完璧に書いてもどこかにボロはあるものです。例えば、前書きが長すぎる、○○についての検討が不充分、論理展開に難があるなどなど、減点する要素はいくらでもあります。一般に、ほかの人(受験者)が書いた文章を自分(試験委員)が読むと不十分な箇所がたくさん見えてしまうものです。しかも、試験委員は謂わばプロ中のプロなので、これから技術士を目指す方が試験会場でぶっつけ本番でしかも限られた時間で書いた論文をそのような方が読めば不充分な箇所はいっぱい目につきます。これは致し方ありません。したがって、そもそも満点の 50 点というような得点はあり得ず、100 人に 1 人というような例外的に優秀な方でもおそらくは 45 点程度までであり、大多数の方は 25 点程度(つまり、60 % より少し下)であると推測されます。
 したがって、 (c) のような得点で合格するためにはこの 25 点程度の論文作成能力を 40 点程度にまで向上させなければなりません。そのためには、例えば 「技術士第二次試験講座 (2)筆記試験合格法」の 2.2.15 のような真の実力養成の方法が考えられます。しかし、御承知のように論文作成能力は謂わば総合力なのでこれを短時間で習得することは難しく、25 点を 40 点にというように大きく向上させるには相当の時間(恐らくは数年単位の時間)を費やす必要があるのではないかと思われます。
 一方、択一式問題では、問題数で 6 割程度は「総監の技術体系」に記述されている内容がそのまま出題されるので「総監の技術体系」さえ充分に理解しておけば 30 点(= 50 点× 6 割)程度はほぼ確実に取れます。したがって、「総監の技術体系」に加えてその関連分野を自分で少し幅広く勉強しておけば、かなりの高得点が望めます。現に自己採点で 40 点とか 45 点とかを取った方も、直接御本人からお聞きしたところではそれはもう実にたくさんおられますし、特に、若くして総監に合格された方はほぼ例外なく択一式問題で高得点を獲得しておられます。しかも、そのような方に「総監の技術体系」の学習にかけた時間をお聞きすると平均で半年程度の短い時間しかかけておられません。
 つまり、記述式問題では得ることが事実上不可能な 40 点とか 45 点とかの点数を、択一式問題では半年程度の集中学習で取ることが十分可能だということです。つまり、実質上の合格ラインである上位 10 % 強に入ることを短時間の準備で可能にするのは、記述式問題ではなくて択一式問題であると思われます。
 もちろん、結果として (c) のような得点で合格された方も僅かですがおられます。これまでにお聞きしたところでは、合格された方のうち択一式問題の得点が最も低かった方は 16 点という方でした。つまり、 (c) も不可能ではありません。ただ、それは結果としてそうなったということであり、 (c) のような得点で合格された方もそのような得点を目ざして受験準備をされたということではないと思います。
 したがって、努力の方向つまり受験準備にかける時間配分としては、 (a)、(b) を目ざして「総監の技術体系」の理解に時間の殆どを割くのが短時間の準備で合格を可能にする唯一の選択肢であると断定してよいと思われます。

「技術士制度における総合技術監理部門の技術体系」の更新と解説 2019年版

3.2「総監の技術体系」理解のコツ

 御承知のように「総監の技術体系」は難解ですが、これは高度の内容を取り扱う書物がしばしば有している性質であること、またページ数を少なくするために限られた紙面の中に圧縮して述べなければならないことなどから、ある意味で致し方のないことと思われます。ただ、逆に言えば、その記述を噛み砕いて理解すれば、その記述の背景に少しだけ分け入って理解すれば、「総監の技術体系」の内容はそれほど難しくはないと思われます。
 例えば、同書の 111 ページに「組織内のネットワーク利用規程に基づいたメールの内容の監視(中略)は対象とならない。」の記述がありますが、これを単にこのまま覚えようとすると、「メールの内容の監視」は憲法第 21 条の「通信の秘密は、これを侵してはならない。」に違反するのではないか、「対象とならない」とは具体的にどういうことなのか、 メールでなく郵便物の場合はどうなのか、などの疑問が残ります。しかし、この記述がメール内容の監視にも言及した東京地裁の判例(東京地裁 平成 12 年 (ワ) 12081 号))に基づいて示されたものであること、その判例が「対象とならない」理由を、要旨、「社内ネットワークシステムには管理者が存在しネットワーク全体を適宜監視しながら保守しているのが通常であることに照らすとプライバシーの保護は当該システムの具体的情況に応じた合理的な範囲でのそれを期待し得るに止まる」と示していることによるものであることを見ておけば、憲法解釈の現状が分かり、上記のような疑問は解消し、併せて関連分野への視界が大きく開けます。また、ブリッジシステムの信頼度の公式は複雑であり、この複雑な公式をただ単に覚えようとすると難しくもあり覚え間違いによるミスの原因にもなります。しかし、この公式が導かれる過程を理解しブリッジシステムの信頼度を直列回路と並列回路の公式だけで解く方法を身につければ、その方法で解く方がブリッジシステムの公式で解くよりもはるかに簡単であることが分かります。つまり、ブリッジシステムの公式は覚える必要が全くないことが分かります。
  したがって、「総監の技術体系」をその字面だけで理解するのでなくその内容を噛み砕いて、また記述の背景に少しだけ分け入って理解することが大切であり、そうすることにより同書は大いに理解しやすくなると思われます。そのためには、「総監の技術体系」はなぜこのように書いているのか、その根拠は何かと疑問を持って同書を読むこと、その疑問を解決する努力をすることなどが有効と思われます。

3.3 関連分野の理解

 「総監の技術体系」からの出題は全問題のうちの概ね 60 % 程度に過ぎないので、同書を理解しただけでは択一式問題で 40 点、45 点のような高得点は望めません。そのような高得点を獲得するためには、「総監の技術体系」の関連分野にやや広く注意を向けこれを理解しておくことがどうしても必要と思われます。

3.4 過去問題による学習

 どのような問題が出題されるのかを前もって知ることが大切ですので、「過去問題(第二次試験)」(日本技術士会)「技術士第二次試験択一式問題の正答(令和2年度まで)」(日本技術士会)などを用いて過去数年分の過去問題を解いて練習しておきます。
 また、希に過去問題と全く同じ問題が出題されることもある様ですのでその点からも過去問題の検討は大切です。過去問題と全く同じ問題が出題されるのは技術士試験のしかも最も難関である総監の問題としてはどうかと思いますが、過去問題にない新しい問題を 1 問作ろうとすると如何に経験豊富な問題作成担当試験委員の方といえども相当の勉強をしなければならず、しかもただでさえ御多忙な日常業務の合間を縫ってこれをしなければならないため、過去問題と全く同じ問題を一定数はそのまま出題せざるを得ないのではないかと推測されます。したがって、過去問題と同じ問題が出題されるのは致し方ないと思われます。
 ただ、過去問題の正否の根拠を自分で勉強しないで過去問題の正否そのものだけを覚えると知識として深まらないので、たとえ多数の過去問題の正否を覚えたとしても試験で 60 % 以上を取ることは困難と推測されます。1 つひとつの選択肢について、自分で関連する文献を紐解いて、何故正なのか、何故否なのかを深く理解することが大切と思われます。

技術士試験総合技術監理部門キーワード事典2010年版

3.5 時間管理の練習

(1) 時間管理の必要性
2 時間という長時間が択一式問題に当てられているので、大あわてで答を出す必要はおそらくないと推測されます。しかし、40 問の各問題がどのくらい時間がかかる問題なのかは各問題を解いてみるまで分からないため、正しい解答をすることだけに気を取られていると時間不足で最後の数問に解答できなくなる可能性があるので、一定程度には速く解き進めることが必要です。
また、日本語表現が紛らわしい、難度が恐ろしく高いなどの理由により 1 問で気の遠くなるような長い時間を要する問題もしばしば出題されますし、希にですが、出題ミスのため正解が存在しない問題もあります。したがって、このような、正解を得ようとすると果てしなく時間がかかる問題に一所懸命取り組んで時間を費やすのは全くの無駄であり、それよりもそれ以外の問題でミスなく得点する方が遙かに重要です。したがって、このような長時間を要する問題は深入りしないでほっておきます。
上記のような時間管理は頭の中で考えると簡単にできるように思えますが、実際に問題を解き始めるとそれほど簡単ではなく、どうしても難問に長い時間をかけてしまいがちです。
したがって、3.4 とは別に、本番において時間管理で失敗しないために、時間管理訓練だけを目的として過去問題を解くことにより時間管理のこつを習得しておくことが大切と思われます。この訓練は次の (2) に留意して行います。
(2) 時間配分の目安
(a) 1 問当たり 1.5 分程度で全問を解く
読んですぐ答が分かる問題にかける時間(おそらく、1 問当たり 0.5〜1.5 分程度と思われます。)と同じ時間で、全ての問題に解答します。この時間は、仮に 1 問当たり 1.5 分として、40 問で 60 分となります。もちろん、0.5 分で解ける問題もあれば少し延ばして 2 分程度かければ解けることが見えているというような問題もあるので、全問に 1.5分かけるということではありません。大切なのは、1 問に 3 分、5 分というような長い時間をかけないことと 40 問で 60 分以内に収めることです。
このとき、次の (ア)、(イ) に注意します。
(ア) 次の (b) をしやすくするために、解答に自信がない問題番号に何かの目印を付けておきます。
(イ) 次の (c) をしやすくするために、正解として選んだ選択肢に何かの目印を付けておきます。
(b) 合計 30 分以内で自信のない問題を解く
次に、(a)、(ア) で印を付けた自信がない問題だけをもう 1 度、合計で 30 分以内で解きます。このときも、1 問当たりにかける時間を同じにします。例えば、(a)、(ア) で印を付けた問題が 5 問あった場合は、どの問題も 6 分(=30÷5)以内で解きます。
(c) 5 分程度で点検する
5 分程度で転記ミス(例えば、I-1-3 の問題の解答を I-1-2 の解答欄に記入したなどのミス)がないかどうかを点検します。
(d) 余った時間で難問を解く
そして最後に、余った時間の全てをかけて、最終的に自信がない難問を解きます。

3.6 真の実力養成のために

 上記 3.13.5 のような比較的短時間の準備で高得点を得るための勉強方法とはかけ離れますが、総監受験を機に総監の知識を真に深めて実際の業務にも活用したいと思う場合は、「総監の技術体系」に記述してある全てのことについて、これは本当に正しいのか、実際に適用するには具体的にどうすればよいのか、という気持ちで点検し、その根拠を法律、規格、指針等を紐解いて調べ、その結果として「総監の技術体系」を深く理解することが有効と思われます。
 これは、暗唱することができるほど「総監の技術体系」に記述されている文章を一言一句まで正確に覚えたとしても、それでは実際の業務には活用できないからです。なぜなら、実際の業務の場面で生じる問題のうちの殆どは「総監の技術体系」に書いてあることをそのまま当てはめることができるような単純なものではなく、また問題が生じたときに調べて対応できるような時間的余裕が通常はないからです。例えば、今日の夕方になって仕事が大幅に遅れていることが判明したので今日の夕方の 5 時から明日の朝 9 時まで時間外労働を命じたいがそれは「労働基準法」に違反しないか、のような形で生じるからです。これを即座に正しく解決するためには、「労働基準法」を「総監の技術体系」に書いてあるような程度ではなくそれよりもずっと深く理解していなければなりません。上記はほんの 1 例ですが「総監の技術体系」に記述されているそのほかの事項についてもほぼ同様です。
 しかし、「総監の技術体系」に記述されている全てのことについてそのような深い理解を得ようとしたら受験に間に合わないのは確実なので、総監受験に目標を絞る限りは、実際の業務に用いることができるほど「総監の技術体系」を深く理解することはお勧めできません。
 できませんが、先達が築いたこの知識の体系は、もし深く理解するなら、技術者を未知の世界へ誘い実際の業務を総合的、創造的、迅速、かつ正確に実施する大きな力を技術者に与えることは論を待たないところと思われます。総監受験の期限内に、「労働基準法」のような特に重要な分野、自分の業務に直接関係すると思われる分野など特定の分野に絞って「総監の技術体系」を深く理解することは実際の業務を実施するために大いに有効であると思われます。あるいは、総監受験を離れて長期的な目標として、「総監の技術体系」に記述されているほぼ全てのことについて「総監の技術体系」を深く理解することも同様に大いに有効であると思われます。

4. 記述式問題の留意点


 択一式問題については以上のとおりですが、記述式問題の留意点については「総合技術監理部門講座 (3)記述式問題の書き方」を御覧ください。


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