(2026.07.17 更新)
(2016.06.05 更新)
技術士試験 (2)論文の書き方
(本ページは総監以外の部門の筆記試験についてのみ記載しています。)
総監以外の部門の口頭試験は こちら
1. 記述式問題の性質と筆記試験の重要性
1.1 記述式問題の性質
記述式問題では、同一の答案を複数の採点委員が採点した場合、採点結果が各採点委員の専門、経験、興味の中心などにより微妙に異なります。これは、記述式問題が有する根本的矛盾です。
しかし、技術士としての能力の評価のためには記述式問題が欠かせないため、技術士試験には記述式問題が不可欠であるというのは動かせざる大命題ですので、この大命題の前には、採点結果が採点委員ごとに微妙に異なるという些細な矛盾など全く拘るに値しないと思われます。もし、この矛盾に拘るのであれば、技術士試験に限らず世の中に記述式問題は一切存在し得ないことになります。さらに、これはあくまで推測ですが、公益社団法人日本技術士会では、1 人の受験者の記述式問題答案を複数の採点委員が採点して、得られた複数の得点の平均値をその受験者の得点とするなどの対策を講じることにより、この欠点の軽減に可能な限り努めているのではないかと推測されます。
したがって、記述式問題解答では、そのような矛盾に打ち勝つ、優れた答案を書く必要があります。
1.2 筆記試験の重要性
筆記試験の重要性は、総合技術監理部門(以下、これを「総監」と称します。)のそれと同じです。総監の「
1.2 筆記試験の重要性」を御覧ください。
2. 解答時間
解答時間(制限時間)は、I 必須科目が 2 時間、II 選択科目・III 選択科目が 3 時間 30 分です。
I 必須科目は午前に、II 選択科目・III 選択科目は午後に、それぞれ行われます。II 選択科目・III 選択科目は、両者の間に区切りはなく、まとめて 1 つの時間帯内で行われます。
3. 受験準備
3.1 問題予測
筆記試験問題については、次の (ア)〜(ウ) のような、具体的場面あるいは問題を提示しそれへの対応を問う問題が出題される可能性が高いのではないかと推測されます。
(ア) ○○を製造する場合の△△の品質管理について、留意すべき点を述べよ。
(イ) あなたは○○分野に責任者として取り組むこととなった。○○のうちの△△について実施方針を作成せよ。
(ウ)「○○の指針」が改正され△△という項目が新設された。△△に関する関係者との調整方策について具体的提案を述べよ。
そして、(ア)〜(ウ) の「○○」、「△△」の部分がかなり詳細、複雑に設定されるものと思われます。
3.2 答案作成練習
3.2.1 答案作成練習の必要性
筆記試験問題は複雑でありかつ制限事項が多いので、解答に当たっては特殊な技術が必要です。そのため、過去問題による答案作成練習が欠かせません。練習には
過去問題(第二次試験)(公益社団法人日本技術士会)を用います。
3.2.2 答案作成練習の留意点
答案作成練習の留意点は下記
4. と同様ですが、次の (1)〜(6) にも留意します。
(1) 練習の範囲
I 必須科目、II 選択科目、III 選択科目の全てについて練習します。
(2) 練習問題数の目安
過去問題と類似の問題が出題される可能性はまずないので、多くの問題について練習してもあまり意味がありません。せいぜい 2〜3 年分の過去問題についても練習すれば十分と思われます。
(3) 手書きでの作成
解答の記入方法、時間配分、書き損じた場合の修正などに慣れるのが大きな目的なので、解答はパソコンではなく手書きで作成します。
(4) 答案用紙への記入
実際の試験の答案用紙にはマス目が印刷してあり、全角文字は 1マスに 1 字、英数字は 1 マスに 2 字、それぞれ記入せよとの指示があります。また、受験番号、受験部門、選択科目、専門とする事項、問題番号などを書く欄が指定されています。枚数指示もあります。これらに慣れるために、答案作成練習では答案用紙のひな型に書きます。インターネットで「技術士 第二次試験 答案用紙」などで検索すると答案用紙のひな型がいくつかヒットするので、そのような答案用紙を印刷して書くのがよいでしょう。
もし印刷できない場合は、答案用紙は A4 判、24 字/行×25 行/ページの形式ですので、自分でそのます目のものを文書作成ソフトで作成、印刷して書きます。
(5) 解答時間の厳守
試験会場では時間不足になる可能性が高いので、練習ではパソコンではなく手書きで解答時間(制限時間)内で書き上げるようにします。5 時間も 10 時間もかけて完全な答案を書いても意味がありません。必ず、手書きで解答時間(制限時間)内で書き上げて、時間の割り振りのこつを会得します。
3.2.2、(2)に「せいぜい 2〜3 年分の過去問題についても練習すれば十分」とありますが、これは問題の雰囲気に慣れるために必要な量です。解答時間(制限時間)内で書き上げる感覚を会得できるまでは、練習はやめてはいけません。
(6) 生成 AI の利用
(a) 生成 AI の利用の有効性
生成 AI(generative artificial intelligence)を利用すると、次のようなことが可能です。
(ア) 筆記試験問題を入力してそれに対する解答を出力する。
(イ) 筆記試験問題とそれに対する自分の解答を入力して、自分の解答に対する評価点を出力する。
(ウ) 筆記試験問題とそれに対する自分の解答を入力して、自分の解答の要改善点を出力する。
したがって、生成 AI を十分利用して答案の改善を図ることが有効です。
(b) 生成 AI の選定
生成 AI は、生成 AI ごとに得手不得手があります。例えば、A という生成 AI はテキスト生成が得手であり、B という生成 AI は画像生成が得手であり、C という生成 AI は音声生成、動画生成が得手であるなどです。生成 AI ごとの特徴をよく見極めて、最も適した生成 AI を利用します。
(c) 全ての要件の明示
生成 AI は、与えられた要件のもとで解答を出力します。生成 AI が解答するため必要な要件の全部を質問文が示していない場合(つまり、要件に抜けがある場合)は、生成 AI はその抜けた部分を適当に補って解答を出力します。そのため、正確な解答は期待できません。質問文には、解答に必要な要件を細部にわたって漏れなく全部示し、何を解答しなければならないかを生成 AI が推測の余地なく判断できるようにします。
(d) 文法的正確性の確保
生成 AI は、質問文に文法的誤りがあった場合は可能な範囲で「この質問文は恐らくこのような意味であろう。」と適宜推測して、その推測結果に基づいて解答を示します。そのため、生成 AI に入力する質問文に文法的誤りがある場合は正確な解答を得られません。質問文は、厳密に文法的に正しく書きます。
(e) 主語の明示
生成 AI は、主語のない文を解釈することは苦手です。したがって、質問文には、必ず 1 文ずつ主語を付けます。
(f) 重文、複文の回避
生成 AI は、複文、重文を解釈することは苦手です。例えば、次のような質問文の解釈は苦手です。
(ア) ○○であるが、○○であるが、○○。
(イ) ○○とし、○○とし、○○。
(ウ) ○○ので、○○ので、○○。
(エ) ○○、かつ○○、かつ○○、○○。
したがって、質問文は複数の単文に分割します。例えば、上記 (ア)〜(エ) はそれぞれ次のような質問文にします。
(ア) ○○である。○○である。○○。
(イ) ○○とする。○○とする。○○。
(ウ) ○○である。○○である。したがって、○○。
(エ)「○○」、「○○」、「○○」の3つを漏れなく満たすときに、○○。
(g) 難解な助詞、接続詞の回避
生成 AI は、日本人が複数個ある意味のどの意味でもさほど差がないとしてあいまいに使用している助詞、接続詞を解釈することは苦手です。例えば、次のような言葉の解釈は苦手です。
(ア) が
(イ) し
(ウ) して
(エ) つつ
(オ) のに
(カ) また
したがって、質問文では上記のような言葉を用いないようにします。
(h) 誤りの許容
生成 AI は、優秀ですが完全ではありません。生成 AI が出力した解答には部分的には誤りがあるという前提でそれを見ることが必要です。
3.3 指の訓練
過去問題による練習をすると気づきますが、筆記試験の解答のためには数時間の長時間に亘って全力で書き続けなければならず、これは日頃全ての業務をパソコンで行っている指にとっては経験したことのない重労働です。この重労働に耐えるためには指を鍛えておかなければなりません。分けても、親指、人差し指、中指の 3 つです。インターネットで「指 トレーニング」などで検索すると指を鍛えるための用具がいくつかヒットするのでそのようなものを用いるのがよいかもしれません。あるいは、テーブルの端、おもりなど身近にあるものを用いても十分可能と思われます。何らかの方法で指を鍛えておきます。
この訓練は、短時日ではあまり効果がないので、試験当日の少なくとも1か月、できれば半年程度前に開始し、毎日十分な時間をかけて行います。
4. 試験会場での解答
4.1 時間配分
I 必須科目の解答時間(制限時間)は 2 時間ですが、この 2 時間を次の項目に分けて時間配分を考えます。II 選択科目では、設問が簡単なため (オ) はほぼ不要なので、(オ) の時間のほぼ全てを (オ) 以外へ振り分けます。III 選択科目では、問題文が I 必須科目よりもやや簡単なため、(エ) は 3 分程度、(オ) は 10 分程度とします。
(ア) 受験番号などの記入 2 分程度
(イ) 解答する問題の決定 3 分程度
(ウ) 枚数確認 1 分程度
(エ) 条件設定確認 7 分程度
(オ) 構想立案 20 分程度
(カ) いや、待てよ 2 分程度
(キ) 解答文執筆 80 分程度
(ク) 査読 3 分程度
(ケ) メモ作成 1 分程度
(コ) 受験番号などの確認 1 分程度
4.2 解答文作成上の留意点
4.2.1 意気高い取り組み
上記 3.1、(ア)〜(ウ) は一例であり、これら以外にも多くの問題が可能です。したがって、試験当日に試験会場で見る実際の問題は、予想を遙かに超えた見たこともない新しい問題である可能性が高いと思われます。しかし、そのような問題には受験者のほぼ全員がそう感じているはずです。つまりスタートラインは皆同じです。そのような問題が出題されても慌てず騒がず、ここが腕の見せ所と意気高く取り組むことが大切と思われます。
4.2.2 受験番号などの記入
答案用紙には受験番号、受験部門、選択科目、専門とする事項、問題番号などを書く欄が指定されているので、試験が始まったら、何よりも先に、全ての答案用紙にこれらを記入します。これらのうちのどれか 1 つでも記入漏れがあると、採点対象外(つまり、不合格)になると推測されます。つまり、この 1 年間の努力は全て無駄になると推測されます。
試験会場で最初にすることは、全ての答案用紙に受験番号などを記入することです。
4.2.3 解答する問題の決定
問題は、通常、複数の問題の中から1問を選択して、選択した問題についてのみ解答する形式になっています。全部の問題に目を通して、そのうちからよい解答文を書けそうな1問を選択します。
4.2.4 枚数確認
(1) 明確な枚数指示
明確な枚数指示とは、使用する答案用紙の枚数を明確に示している指示です。例えば、次の (a)〜(c) のような指示です。
(a) 問題ごとに答案用紙を替えること。
(b) 答案用紙 2 枚以内にまとめよ。
(c) 問い (1) については,答案用紙 3 枚以内にまとめよ。
明確な枚数指示は刺身の妻ではなく作問委員が(したがって、採点委員が)採点に当たって必要不可欠と考えている事項であるため、このような指示に 1 つでも反すると、指示理解能力不足と見なされて採点対象外(つまり、不合格)になると推測されるので、明確な枚数指示には厳密に従わなければなりません。
(2) 不明確な枚数指示
不明確な枚数指示とは、例えば次の (a) のような指示です。
(a) 解答の文章量の目安は,問い (1) を答案用紙 1 枚程度、問い (2) を同 2 枚程度とする。
上記 (a) は、「目安」、「程度」としているので、不明確な枚数指示です。不明確な枚数指示に少し反しただけでは指示理解能力不足と見なされることはない(つまり、採点対象外(つまり、不合格)になることはない)と推測されますが、作問委員の(したがって、採点委員の)期待に反することにはなります。期待に反する記述をすると不利益になることはあっても利益になることはないと推測されます。したがって、この指示にも厳密に従うのがよいと推測されます。例えば、上記 (a) であれば、厳密に問い 1 を 1 枚、問い 2 を 2 枚で解答するのがよいと推測されます。
ただ、(a) は答案用紙を替えよとは言っていないので、問い (1) の解答文の末尾では用紙は替えません。例えば、問い (1) の解答末尾行が答案用紙枠の最終行から 2 行上(手前)で終わっている場合は、問い (2) の解答は問い (1) の解答末尾行の次の行から書き始めます。これは、問い (2) の解答を記入する行数を少しでも多く確保するためです。
(3) ○枚以内
上記 (1)、(c) のような「○枚以内」という枚数指示は文字どおりに「○枚以内であれば 1 枚、2 枚、‥‥、○枚のどれでもよい。」という意味ではなく「○枚より少なくては合格はおぼつかないぞ。」という意味です。「○枚以内」という枚数指示があった場合は、丁度「○枚」に仕上げます。
(4) 枚数指示の記入
文章を書き始めると書くことに気を取られて枚数指示があることを忘れやすいので、文章を書き始める前に、答案用紙に枚数指示を記入します。例えば、上記 (1)〜(3) のいずれの場合にも、次の (ア)、(イ) をします。
(ア) 答案用紙の全てに問題番号を記入します。どの問題に解答するかまだ決めてない場合は、後で記入しなければならないことを忘れないために、問題番号記入欄を薄く大きな丸で囲っておきます。
(イ) 答案用紙の欄外に薄く大きな字で「II-2-1 はここまで」などと記入します。
この丸と文字は答案提出前に消します。
4.2.5 条件設定確認
解答として記述することを作問委員が(したがって、採点委員が)期待する事項は上記 3.1、(ア)〜(ウ) の「○○」、「△△」の部分に全て記されています。この部分を、通常、条件設定と言います。
条件設定は、実際の業務を行う場合に置き換えて見ると、業務仕様書であり、顧客の要望であり、上司からの指示です。そのようなものを正しく理解して、それに的確に応える能力を有しているかどうかを、作問委員は(したがって、採点委員は)条件設定を通じて見ているわけです。
したがって、条件設定に外れたことを少しでも書くと、指示理解能力不足と見なされて採点の対象外(つまり、不合格)になると推測されます。この 1 年間の努力は、全て無駄になります。十分な時間をかけて完璧に確認します。くれぐれも注意が必要です。
条件設定を読むときに注意することは次の (ア)〜(オ) です。
(ア) 落ち着いて読む。
(イ) 2 回どおり読む。
(ウ) 飛ばさないで隅から隅まで読む。
(エ) 条件設定を表す文字列に漏れなく印を付けながら読む。
(オ) 解答文の内容については何も考えないで、どの文字列が条件設定であるかだけを考えて読む。
4.2.6 構想立案
(1) 構想立案
次の (ア)、(イ) により構想を立案します。
(ア) 解答論文の見出しを作る。
(イ) 各見出しに入れる細部内容を箇条書きで作る。
(2) 構想立案上の留意点
(a) 条件設定への一致
構想立案で最も大切なことは、当然ながら、
4.2.5 で確認した条件設定にぴったり合うように構想を作成することです。例えば、「課題を 2 つ選び」とあった場合は、課題は 2 つ書きます。1 つだけ書いたり 3 つ書いたりしてはいけません。
(b) 条件設定への一致の明示
条件設定に合致していることは、解答論文の内容においてだけではなく、解答論文の見出しにおいても明示します。例えば、「課題を 2 つ選び」とあった場合は、選んだ課題に「課題 1」、「課題 2」などの見出しを付けることにより条件設定に合致していることを明示します。採点委員はその見出しを見て「ほう、気が利いているな。」と思います。結果として、論文の内容をよく理解して貰えます。
(c) 全項目の記述
項目数を制限する指示がない限りは、できるだけ多くの項目について書きます。例えば、答案として書くべき項目を仮に 5 個思いついたばあいは、そのうちの重要でない 3 項目を省いて重要な 2 項目だけを書いたりしないで、5 項目全部を書きます。これは、自分では自信があってもその 2 項目が採点委員の考える重要項目ではない可能性もあるし、採点委員は重要項目だけでなく全ての項目を書くことを求めているかもしないからです。また、数多く書き過ぎたがための減点はないからです。したがって、項目数を制限する指示がない限りは、技術的項目はもちろん、情報セキュリティ、補償、環境、ビジネスコンプライアンス、地域社会・関係機関への対応、テレビで時々見かけるみっともない出来事の二の舞をしないための方策、などなど、およそ考え得る限り多方面かつ多数の項目について記します。失敗しないための安全策です。
(d) 指示されていない事項の記述の回避
指示されていない事項を書くと指示された事項を書くための文章量が圧迫され全体として説明不足で迫力のない文章となるので、これは書かない方がよいと思われます。例えば、「その他の事項について」のような項目は、書くようにとの指示がない限り、又はそれが論文の構成上不可欠でない限り、書かない方がよいと思われます。もし書いても、採点委員は「余計な記述だ。邪魔だな。」と思ってその部分を無視するのが関の山でしょう。
「はじめに」や「終わりに」のような項目も、ほぼ同様と思われます。
(e) 問題用紙の利用
構想立案は、問題用紙の余白部分を利用して行います。答案用紙の裏面を利用して行うことも可能ですが、答案用紙は提出してしまうため手元に残らないので、問題用紙の余白部分を利用して行います。
4.2.7 いや、待てよ
上記 4.2.6 ができ上がったら「さあ、書こう。」と思います。しかし、ここで忘れないように、次の (ア) をします。
(ア)完成した見出し、細部内容が
4.2.5 で 付けた印に合致しているかどうかを、印 1 個ごとに、もれなく全部、再確認する。
この再確認を行うのは、4.2.5 は完璧に行ったのに、構想立案のときに 4.2.5 とは一部違う構想としたため不合格となったという方がときにお見えだからです。一瞬のミス、信じられないミスです。試験会場ではひどく緊張しているので、普段なら絶対にしないようなことをしてしまいます。1 年間の努力が水の泡です。悔やんでも悔やみきれません。
したがって、「さあ、書こう。」と思ったときに書いてはいけません。「さあ、書こう。」は、「いや、待てよ。」です。
ここより後には、確認する機会はありません。ここで、忘れないように、必ず、必ず、再確認します。
4.2.8 解答文執筆
(1) 執筆時間
4.2.6 で作成した見出し、細部内容に従って文章化します。
内容を考えながら書く速さは、通常、1 分間に 50 字程度ですので、 80 分で 4,000 字(=50 字/分×80 分)程度書くことが可能です。I 必須科目の文字数は 1,800 字(=600 字/枚×3 枚)ですので、80 分という時間は少し余裕のある時間です。しかし、当初の構想どおりでは不具合が出ると判明することもあるし、既に書いたものを部分的に修正しなければならなくなることもあります。したがって、80 分という時間は、多くの場合、必要最低限の時間であり余裕はありません。
逆に言えば、試験会場において執筆時間として80分を確保することは必須となります。これを割り込むと、多くの場合、論文の完成は困難となります。
II 選択科目、III 選択科目も同様です。
(2) 正当性の明示
解答文執筆においては、適当に決めざるを得ない事項がよくあります。例えば、のり面の勾配をいくらにするかは、重要な事項ではありますが、現地の特性を十分に考慮しなければならないため担当者に任される面が少なくありません。このような場合に担当者に任されているからと指針や共通仕様書に示される範囲内ではあっても如何にも好き勝手に決めたような書き方をすると、採点委員が「そんなことなら技術士でなくてもできる。」と思う可能性があります。したがって、重要かつ担当者の判断に任された事項については、できるだけデータ、根拠を示して自分の判断の正当性を示すのがよいと思われます。文字数の制限などのため十分に示すことができない場合は、例えば「やや値的には小さいが」などとさらりと触れることにより値の妥当性については十分に考察済みであることを示します。
これと異なり、さ細かつ担当者の判断に任された事項については、その正当性を主張する必要性は低いと思われます。
(3) 反論の明示
一般に、I 必須科目の答案は、専門、経験、興味の中心などの相違などにより、ある人がよいと思うものでも他の人は問題が多いと思うことがよくあるものです。また、試験委員は全ての分野についての専門家ではないので、ある特定の分野については受験者の方が遙かに知識が豊富で判断も正確であるという場合もときに生じます。そのため、自信を持って書いた答案でも採点委員はそれに疑問を抱く可能性が十分にあります。このような反論は答案の中で最も重要で根幹を成す内容の箇所あるいは最も斬新で画期的な内容の箇所に対して抱かれることが多く、その場合は命取りになる可能性もあります。
採点委員がそのような疑問を抱いたとき、もしその疑問に対する反論が既に答案の中に書いてあれば、試験委員は少なくとも「その当否は別として、答案内容の客観的妥当性についても一応の検討はなされている。」と思い、よほどのことがない限りその疑問を理由に不合格にすることはないと思われます。また、口頭試験でその点について尋ねる場合でも、穏やかな尋ね方になると思われます。
しかし、もし疑問に対する反論が書いてなければ、試験委員は、「こんな荒唐無稽な提案をするとは論外。不合格。」と思うか、仮に「一応合格。」と思った場合でも「口頭試験で徹底的に尋ねよう。」と思うに違いありません。前者であれば万事休すですし、後者であっても口頭試験で大きな負担を背負うこととなります。
したがって、疑問に対する反論は口頭試験で厳しい試問に遭わないためにも大切なので、もし採点委員がこれに関して自分ほどの専門家でなかったら、もし採点委員が自分と反対の信念を持っている人だったら、など様々な場合を想定して、採点委員が答案を読んだ場合にどの点について疑問を持ち反論してくるかを推測し、見極め、その反論に対する反論を答案の中に入れ込んでおくことが大切と思われます。
ただ、反論に対する反論は、試験委員を論破するためのものではなくそのような点にまで十分配慮していることを明示するためのものなので、長々と書く必要はなく、「○○という考え方もあるものの」、「○○についても十分検討したうえで」、「経費的には○%ほどの増加が見込まれたが」などの極く簡単な文言でよいと思われます。
(4) 単文での記述
が、し、ため、ので、また、などの助詞、接続詞を用いて重文、複文で書くと、複雑な検討を加えてよく推敲した感じが出て格調高い論文になります。しかし、その分だけ論旨の明確性、文章の迫力は確実に失われます。文は、可能な限り、単文で書きます。
(5) 個条書きでの記述
個条書きを用いないで、複数の項目を1つの単文の中に収めると、複雑な検討を加えてよく推敲した感じが出て格調高い論文になります。しかし、その分だけ論旨の明確性、文章の迫力は確実に失われます。枚数制限もあるので全てを個条書きにすることはできませんが、文は、可能な限り、個条書きを用いて書きます。
(6) マス目内への記述
図表を用いる場合も同様です。
(7) 末尾空白行の設定
「解答は答案用紙○枚以内にまとめよ。」のような枚数指示がある場合は、通常は、この「○」が 1 である場合は 1 枚目の答案用紙の最後の1行程度を、「○」が 2 又は 3 である場合は最後の答案用紙の最後の 2 行程度を、それぞれ空白行にします。このようにするのは、(i) 書こうと思えばまだいくらでも詳しく書く力量、(ii) 余裕を持って記述を打ち切る力量の両方を有していることを示すためです。もちろん、このような空白行を設けることは明らかに小手先の小細工ですのでこれに拘る必要は全くありませんが、そのようにできれば最良と思われます。
(8)「以上」の記入
そこまでで解答論文が終わりであることを示すために、解答論文の末尾行の右端 2 ますに「以上」の 2 文字を記入します。これを記入しておくと印象がよいので若干の加点が期待できます。
4.2.9 査読
解答論文を書き上げたら査読をして、用語の統一、言い回しの統一、誤字脱字の修正、必要箇所への強調のための下線の加筆、冗長文字列の削除、などをします。
4.2.10 メモ作成
「技術士試験 (3)口頭試験合格法」の 4.1 に示すように筆記試験終了後に口頭試験に備えて答案を復元する必要があるので、少なくとも答案の見出し、細部内容個条書き、主要な数値、主要な論旨程度をメモしておきます。既に 4.2.6 で見出しと細部内容個条書きは作成してあるので、それに補足、修正する形で作成します。
メモは、答案用紙は提出してしまうため手元に残らないので、問題用紙の余白部分を利用して行います。
また、筆記試験終了合図が行われるよりも前に試験会場を退室すると問題用紙を持ち帰ることができないので、試験終了合図があった後に退室します。
4.2.11 受験番号などの確認
問題用紙上端に記入する受験番号、問題番号などのうちどれか 1 つでも記入漏れがあるとこの 1 年間の努力は全て無駄になるので、受験番号、問題番号などが漏れなく記入されているかどうかを点検、確認します。
試験会場で最後にすることは、全ての答案用紙に受験番号、問題番号などが正しく記入されているかどうかを確認することです。
5. べからず(NG)3 項目とその回避
以上で既にお分かりと思いますが、筆記試験では次の (1)〜(3) の行為は厳禁です。このうちのどれか 1 つでも行うとまず間違いなく採点対象外(つまり、不合格)になると推測されます。
(1) 受験番号等を書き忘れること
これについては 4.2.2 を御覧ください。
(2) 枚数指示に反すること
これについては 4.2.4 を御覧ください。
(3) 条件設定に反すること
これについては 4.2.5 を御覧ください。
6. 真の実力の養成
上記 4. のような比較的短時間で高得点を得るための勉強方法とはかけ離れますが、技術士受験を機に真の論文作成能力向上も併せて図りたい場合は、業務報告書、筆記試験練習答案など自分が様々な場面で書いた文章を読み直して、論旨に矛盾はないか、文意に紛らわしさはないか、結論の妥当性を訴える気迫は十分伝わるかなどを自分で点検、改善する訓練を日常的に行うことが何より有効と思われます。読み直すときは、その文章の著者(つまり、自分)の気持ちではなく他人が書いた文章を一字一句点検する気持ちで読むこと、その文章を書いた直後ではなく少なくとも 1 日、できれば 1 週間程度以上経ってから読み直すこと、などが大切と思われます。この勉強法の長所は、自分が努力を続ける限り論文作成能力を無限に向上させることができることです。限界がないことです。
論文作成方法を解説した書籍を読むのもよいかもしれません。そのような書籍には、「論文では起承転結を明確に示せ」のような大所高所の指摘から「「こと」を、漢字で「事」と書く場合と平仮名で「こと」と書く場合とを明確に区別せよ」などといった気の遠くなるような細かい指摘まで、通常、雑多に並んでいますが、感覚的に自分に最もぴったり来る指摘から順に訓練して最終的にその書籍全体をものにしていくのがよいと思われます。
また、論文作成能力は技術業務の経験にも依るので、論文作成能力向上のためには技術業務の経験をできるだけ深く積むことも欠かせないと思われます。
このような努力は短時間では目に見える成果が出ませんが、常にそのようなことに気をつけて業務に取り組み文章を書いていれば確実に実力が向上すると思われます。
7. 口頭試験受験上の留意点
筆記試験については以上のとおりですが、口頭試験受験上の留意点については 技術士試験 (3)口頭試験合格法 を御覧ください。
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