技術士試験講座





(2016.06.05 更新)

業務経歴票と業務内容の詳細の書き方

         総監の口頭試験は こちら

         総監以外の部門の口頭試験は こちら


「技術士制度における総合技術監理部門の技術体系」の更新と訂正 2016年版

1. 受験申込書(受験願書)の重要性


 第二次試験受験申込書(受験願書)は受験の基礎となるものであるため、その全ての項目を正しく記入しなければなりません。しかし、これらの項目のうちには正しければそれでよいとは言えないものがあります。それは「業務経歴票」です。
 「業務経歴票」に記入した内容は口頭試験の対象となります(こちら の、2、(2)の項)。つまり、口頭試験においては、試験委員は「業務経歴票」に記入された内容が合格ラインに達してない又は達してない可能性があると判断した場合はその判断が正しいかどうかを確認するために口頭試験の席上で受験者に質問し、それに対する受験者の解答を見て、やはり達していないと判断した場合はその受験者を不合格とします。つまり、「業務経歴票」に記入した内容は第二次試験の答案であると見なされるということです。つまり、「第二次試験受験申込書」は、標題とは裏腹に、その実態は「第二次試験答案」であるということです。
 「業務経歴票」に記入すべき事項を指示する文言は「勤務先における業務経歴」、「業務内容の詳細」などという恐ろしく簡単なものですが、上記の理由により、これらの文言は口頭試験における試験委員の最初の質問であると考えて、それが何を要求しているのかについて深く考察し、その要求にぴったり合致する「第二次試験受験申込書」つまり「第二次試験答案」を作成、提出しなければ合格はおぼつかないないと思われます。
 以下は、「勤務先における業務経歴」、「業務内容の詳細」などが何を要求しているかについての考察です。自分の業務経歴をその要求に十分に合致する形にして記入することが大切と思われます。
 なお、口頭試験そのものの受験上の留意点については、総合技術監理部門(以下、これを「総監」と称します。)以外の部門については 「第二次試験講座面接口頭試験」(以下、これを「第二次講座口頭」と称します。)を、総監については 「総合技術監理部門講座面接口頭試験」(以下、これを「総監講座口頭」と称します。)を、それぞれ御覧ください。

2. 総監以外の部門の「業務経歴票」の書き方

2.1「勤務先における業務経歴」の書き方

2.1.1 受験申込書が求めるもの
技術士法」は次の『』内のように規定しています(第6条第2項)。
『2 次のいずれかに該当する者は、第二次試験を受けることができる。
一 技術士補として技術士を補助したことがある者で、その補助した期間が文部科学省令で定める期間を超えるもの
二 前号に掲げる者のほか、科学技術に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務を行う者の監督(文部科学省令で定める要件に該当する内容のものに限る。)の下に当該業務に従事した者で、その従事した期間が文部科学省令で定める期間を超えるもの(技術士補となる資格を有するものに限る。)
三 前二号に掲げる者のほか、前号に規定する業務に従事した者で、その従事した期間が文部科学省令で定める期間を超えるもの(技術士補となる資格を有するものに限る。)』

 上記「技術士法」第6条第2項に言う「文部科学省令」は「技術士法施行規則」であり、同規則は次の【】内のように規定しています(第10条)。
【第十条 法第六条第二項第一号の文部科学省令で定める期間は、総合技術監理部門について受験する場合にあつては通算して七年とし、総合技術監理部門以外の技術部門について受験する場合にあつては通算して四年とする。
2 前項の期間については、法第六条第二項第二号に定める期間を算入することができる。
3 法第六条第二項第二号の文部科学省令で定める期間は、総合技術監理部門について受験する場合にあつては通算して七年(技術士補となる資格を得た後のものに限る。)とし、総合技術監理部門以外の技術部門について受験する場合にあつては通算して四年(技術士補となる資格を得た後のものに限る。)とする。
4 前項の期間については、法第六条第二項第一号に定める期間を算入することができる。
5 法第六条第二項第三号の文部科学省令で定める期間は、総合技術監理部門について受験する場合にあつては通算して十年(既に総合技術監理部門以外の技術部門について技術士となる資格を有する者にあつては通算して七年)とし、総合技術監理部門以外の技術部門について受験する場合にあつては通算して七年とする。
6 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)による大学院修士課程(理科系統のものに限る。)若しくは専門職学位課程(理科系統のものに限る。)を修了し、又は博士課程(理科系統のものに限る。)に在学し、若しくは在学していた者にあつては、第一項、第三項又は前項に定める期間は、当該期間から、その在学した期間(二年を限度とする。)を減じた期間とする。】

 上記は条文なので少し分かり難いですが、極く簡単に要約するとこれらは次の(a)、(b)を言っています。
(a) 総監以外の技術部門の第二次試験を受験する場合は、業務に従事した年数(以下、これを「業務従事年数」と称します。)が受験申込み時点で次の(ア)〜(ウ)のいずれかに該当することが必要である(以下、「技術士法」第6条第2項が求める業務従事年数(つまり、次の(ア)〜(ウ))を「年数要件」と称します。)。
(ア) 技術士補として技術士を補助して業務に従事した期間が、通算4年を超える。
※この期間には下記(イ)の期間を算入(加算計上)することができる。
(イ) 技術士補となる資格を得たとき以降に指導者の監督のもとに業務に従事した期間が、通算4年を超える。
※この期間には上記(ア)の期間を算入(加算計上)することができる。
(ウ) 業務に従事した期間が、通算7年を超える。
※この場合、技術士補となる資格を得たとき以降だけで通算7年を超える必要はなく、技術士補となる資格を得たとき以前のものも含めて通算で7年を超えればよい。ただし、受験の時点で技術士補となる資格を有していなければならない。
また、大学院における研究経歴の期間は、2年を限度として、上記(ア)〜(ウ)の「業務に従事した期間」として算入(加算計上)することができる。
(b) 総監以外の技術部門の第二次試験を受験する場合は、上記(a)の年数要件に示される期間において従事した業務が次の(ア)又は(イ)に該当することが必要である(以下、「技術士法」第6条第2項が求める業務(つまり、次の(ア)、(イ))を「業務要件」と称します。)。
(ア) 年数要件 2.1.1、(a)、(ア) で受験する場合は、技術士補として技術士を補助する業務。
(イ) 年数要件 2.1.1、(a)、(イ)又は(ウ)で受験する場合は、科学技術に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務。
 したがって、受験申込書に記入する事項のうちで最も重要なこと(つまり、受験申込書が最も強く求めるもの)は年数要件と業務要件の2つを満たしていることが確認できるように記入することであると言っても過言ではありません。
 これが確認できるように記入するためには、次の 2.1.22.1.3 が大切です。

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2.1.2 年数要件を満たしていることの明示
2.1.2.1 年数要件の判定基準
 年数要件を満たしているか否かの判定基準は、「技術士法」第6条の主旨により、受験申込書に記入した内容が次の(1)、(2)の両方を満たしていることです。
(1)「年月数」欄に記入した値の合計が年数要件以上である
上記「「年月数」欄に記入した値の合計」とは、次のAです。
A=a+b
ここで、
a 「勤務先における業務経歴」の5つの「年月数」欄に記入した値の合計
ただし、この場合、5つの「年・月〜年・月」欄に記入した期間に重複がないように記入されていなければなりません。重複の有無については 2.1.2.3、(2) を御覧ください。
b 「大学院における研究経歴」の「年月数」欄に記入した値
ただし、大学院において研究した期間が2年を超える場合は、b は 2 年とします。b を 2 年以上の値とすることはできません。例えば、「大学院における研究経歴」の「年月数」欄に 5 年と記入した場合であっても、Aの計算式に用いる b の値は 2 年とします。
(2)「通算合計年数」欄に記入した値が年数要件以上である
上記「「通算合計年数」欄に記入した値」とは、「勤務先における業務経歴」欄にどのように記入したかに関わらず、次のCです。つまり、Cを「通算合計年数」欄に記入します。
C=c+b
ここで、
c 業務要件に合致する業務に従事した全ての期間の総合計
c は、業務要件に合致する業務に従事した全ての期間の総合計(以下、これを「合致総合計」と称します。)です。「勤務先における業務経歴」の 5 つの欄にどのように記入したかには関わらず、それとは別に、合致総合計を別途計算して求め、それを c とします。
b 「大学院における研究経歴」の「年月数」欄に記入した値
ただし、b を 2 年以上の値とすることができないことは上記 (1) の場合と同様です。
2.1.2.2 年数要件を満たす記入
 上記 2.1.2.1、(1)、(2)のどちらか一方又は両方を満たしていない場合は、受験申込書提出直後に日本技術士会から申込書が返送されるので試験を受けることができません。したがって、2.1.2.1、(1)、(2)のように記入することは必須です。
 なお、事情によって5つの「年月数」欄に合致総合計を書かない(又は、書けない)場合は A<C となり、5つの「年月数」欄に合致総合計を書いた場合は A=C となりますが、日本技術士会は年数要件を満たしてさえいれば A<C、A=C のどちらであってもよいとしています(「技術士試験と受験申込書(願書)の書き方」(以下、これを「試験と申込書の書き方」と称します。)の6 の「業務経歴に関する質問」の項)。
2.1.2.3 その他の留意点
 次の(1)〜(4)は、「技術士法」には何ら規程がないのでこれらに相違しても受験できなくなったり不合格になったりすることはありませんが、業務経歴をよりよく理解してもらうためには留意して記入することが望ましい事項です。
(1) 上から下へ時系列順の記入
業務経歴は、通常、古いものから順に見るのでそのときに見やすいようにするために、「勤務先における業務経歴」の表の5つの記入欄のうち最上欄に最も古い経歴が、最下欄に最も新しい経歴が、それぞれ位置するように、かつ時系列に沿って、記入します。
(2)「年・月〜年・月」欄に重複がない記入
年数要件を満たしているかどうかの確認が受験申込書提出直後に行われますが、このとき、まず「勤務先における業務経歴」の表の5つの「年月数」欄の値を単純に合計して得た値が年数要件を満たしているか否かの確認をします。このときもし5つの「年・月〜年・月」欄に記入した期間に重複があるとこの確認をしにくいので、重複がないように記入します。
もし重複があるように記入した場合は、2.1.2.1、(1) のAを求めるときに重複している期間の年月数を減じなければなりません。つまり、Aの計算式を「A=a+b−重複している期間の年月数」としなければなりません。
(3) 研究経歴の記入
大学院における研究経歴を加えるまでもなく勤務先における業務経歴のみで年数要件を満たしている場合でも、自分の経歴を試験委員にできるだけ十分に理解してもらうために、大学院における研究経歴がある場合はそれを「大学院における研究経歴」欄に記入します。
(4) 可能な限り全経歴の記入
平成25年度に受験申込書が改訂されて現行の様式になりました。改訂前の受験申込書には「大学院における研究経歴」記入欄が2欄、「勤務先における業務経歴」記入欄が10欄あったのですが、現行の様式では両記入欄ともに改定前の丁度半分(つまり、1欄と5欄)になったので業務経歴が長い場合は全部を書くことができません。半分にした理由を日本技術士会は公表していませんが、おそらくは「勤務先における業務経歴」は年数要件、業務要件を満たしていることが分かりさえすればよく、そのためには半分で十分だということではないかと推測されます。
この推測を裏付けるように、日本技術士会は次の (a)〜(c)のように記入してもよいとしています(「試験と申込書の書き方」の6 の「業務経歴に関する質問」の項)。
(a) 業務経歴欄の行数が足らない場合は、受験資格を満たす年数分を抜き出して記入してもよい。
(b) 業務の従事期間が連続していなくてもよい。
(c) 通算合計年数欄の年月数と5つの従事期間の合計が異なっていてもよい。
上記(a)〜(c)に基づけば、業務経歴が長い場合、例えば次の(ア)〜(ウ)のような記入方法が可能です。
(ア) 業務要件に最もよく合致する業務を行った期間だけの記入
業務経歴のうちから業務要件に最もよく合致する業務に従事したいくつかの期間だけを抽出して、それらの期間の合計が年数要件を満たすように記入します。例えば、平成5年に入社して平成28年までずっと業務要件に合致する業務に従事した場合で、かつそのうちの平成5年〜9年、平成15年〜19年、平成25年〜28年の3つの期間に業務要件に最もよく合致する業務に従事した場合は、これら3つの期間を記入します。これは、業務要件に最もよく合致する業務について記入することが大切であるという考えに基づくものです。また、上記の例ではこれら3つの期間の合計が13年になるので、この記入方法は年数要件の点からも問題ありません。
(イ) 直近の10〜15年程度のみの記入
業務経歴のうちから直近の10〜15年程度を抽出して記入します。例えば、平成5年に入社して平成28年までずっと業務要件に合致する業務に従事した場合、平成15年〜28年の13年間のみを記入します。これは、通常は、業務要件によりよく合致する業務に従事したのは古い時代ではなく最近(つまり、若い頃ではなく、役職が付いて部下を指導するようになってまた経験も積んでから)であることが多いこと、古い時代の規程、基準、指針などのうちには現在では既に用いられていないものもあるためそのような古い規程、基準、指針などに基づいて実施した業務経歴を現時点で評価することには若干の困難が伴うことなどにより、直近の10年〜15年程度の経歴を詳しく記入することが大切であるという考えに基づくものです。また、上記の例ではこの13年間で年数要件も満たしているので、この記入方法は年数要件の点からも問題ありません。
(ウ) 全期間の記入
業務要件に合致する業務に従事した全期間を記入します。例えば、平成5年に入社して平成28年までずっと業務要件に合致する業務に従事した場合、平成5年〜28年の全期間を記入します。これは業務経歴をよく理解してもらうためには全期間を記入することが大切であるという考えに基づくものです。また、上記の例ではこの23年間で年数要件も満たしているので年数要件の点からも問題ありません。
ただ、「勤務先における業務経歴」欄は5欄しかないので23年もの経歴を詳細に記入することは困難です。したがって、次の(i)、(ii)のようにします。
(i) 次の(ii)以外の経歴を1欄目に記入
次の(ii)以外の経歴の全部をまとめて1欄目に記入します。こうすると、多くの場合、1欄目の「地位・職名」欄には「技術員、係長、課長等」などと複数の名称を記入し、「業務内容」欄には「○○の設計、○○の分析、○○の評価等」のように複数の業務名を記入し、もしその間に転職していた場合は「勤務先」、「所在地」欄にも複数の名称を記入することとなります。また、いずれの欄においても、その全てを書ききれない場合は「等」を付けて記入することとなります。
(ii) 直近の10年〜15年程度の経歴を2〜5欄目に記入
直近の10年〜15年程度の経歴を2〜5欄目に記入します。これは、上記(イ)と同様の考えに基づくものです。
もし勤務先において勤務した全期間において業務要件に合致する業務に従事していた場合は、上記(i)、(ii)のように記入すると次の(α)、(β)のようになります。
(α)「年・月〜年・月」欄に記入した期間に欠損なし
「勤務先における業務経歴」の計 5 つ の「年・月〜年・月」欄に記入した期間に欠損(つまり、空白期間)がなくなります。
また、既に 2.1.2.3、(2) によって計 5 つ の「年・月〜年・月」欄に記入した期間に重複がないようにしてあるので、結局、計 5 つ の「年・月〜年・月」欄に記した期間に欠損も重複もなくこれら5つの期間が完全に連続することとなります。
(β)「年月数」欄の合計が「通算合計年数」欄と一致
「年月数」欄の合計が「通算合計年数」欄と一致することとなります。つまり、2.1.2.1 のA、Cの間に A=C の関係が成り立つこととなります。
上記(ア)〜(ウ)のどれでも年数要件に合致するので全く問題ありません。
ただ、(ア)のように記入すると、試験委員は「この記入されてない期間は一体何をしていたんだろう。」と疑問を持ちます。その期間に何をしていようとも年数要件は間違いなく満たしているので何も問題ないのですが、より十分な判定をするために試験委員はその記入されてない期間について口頭試験の席上で質問し、解答を聞いた後で「そんなことなら、そうだと分かるように全期間を書いておけよ。余計な心配をするじゃないか。」と思うと推測されます。つまり、試験委員に負担がかかり、また貴重な口頭試験の時間がそれだけ消費されます。そのようなことを避けるために、業務要件にさほどよくは合致しない業務に従事した期間についてもできるだけ記入しておき、業務経歴票を読んだだけで自分の経歴全体をよく理解して貰えるようにしておくのがよいと思われます。つまり、(ア)は避けるのがよいと思われます。
(イ)のように記入すると、試験委員は「ここに記入されているより前の期間も、多分、同様の業務をしていたんだろうな。」と思うと推測されます。しかし(イ)は(ア)程の不自然さがないので記入されているより前の期間について質問はしないかもしれませんが、質問しなかった場合は受験者の経歴について推測の領域が試験委員の気持ちの中に残ります。つまり、できれば(イ)も避けるのがよいと思われます。
(ウ)のように記入すると、経歴については何も不明点がありません。一目瞭然です。
つまり、自分が試験委員として受験者の経歴を評価する立場になった場合を考えれば容易に推測できると思いますが、(ア)、(イ)よりも(ウ)の方が安心して受験者の経歴の評価をすることができます。つまり、(ア)、(イ)はこれでも不合格にはならない記入方法であり、(ウ)は試験委員に優しい記入方法です。したがって、特別の事情がある場合を除いて、(ア)、(イ)はお勧めできません。可能な限り(ウ)で記入するのがよいと思われます。

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2.1.3 業務要件を満たしていることの明示
2.1.3.1 業務要件の判定基準
 業務要件を満たしているか否かの判定基準は、「技術士法」第6条の主旨により、次の(1)、(2)の両方を満たしていることです。
(1)「業務内容」、「業務内容の詳細」欄の記述が受験部門、選択科目、専門とする事項に合致する
(2)「業務内容」、「業務内容の詳細」欄の記述が業務要件に合致する
2.1.3.2 業務要件を満たす記入
 「業務内容」欄に記入漏れがある、「業務内容」欄に全く的外れなことが書いてある等明らかな不備がある場合は、受験申込書提出直後に日本技術士会から申込書が返送されるので試験を受けることができません。しかし、そのような場合以外は、上記2.1.3.1、(1)、(2)を満たしているか否かの判定は口頭試験において試験委員が行います。
 したがって、口頭試験に合格するためには 2.1.3.1、(1)、(2)を十分に満たしていることを明示し、訴え、宣伝しなければならないので、次の(1)〜(6)のようなことに注意して記入することが大切です。
(1) 受験部門、選択科目、専門とする事項に合致した業務の記入
受験申込書に記入した受験部門、選択科目、専門とする事項と「業務内容」欄に記入した事項とが合致しない場合は、口頭試験で不合格となります。ある程度合致するがあまりよく合致しない場合は、口頭試験で多くの質問を受け窮地に立つことになります。したがって、よく合致する業務を、かつ合致していることがよく分かるように記入します。
例えば選択科目ですが、「業務内容」が道路建設事業における自然環境、生活環境についての環境影響評価である場合に選択科目を「道路」とすると、選択科目の設定が正しくないとみなされて不合格になります。この場合は、「業務内容」が道路に関する内容ではありますが、合格するためには選択科目を「建設環境」としなければなりません。また例えば、「業務内容」がトンネルの施工計画、施工管理、施工設備である場合に選択科目を「トンネル」とすると、選択科目の設定が正しくないとみなされて不合格になります。この場合は、「業務内容」がトンネルに関する内容ではありますが、合格するためには選択科目を「施工計画、施工設備及び積算」としなければなりません。選択科目と「業務内容」とは一方を先に決めて他方をそれに合わせるというものではなく、選択科目と「業務内容」の組みあわせについて思いを巡らせ、最適な組み合わせを決定することが大切と思われます。
また、業務経歴が10年ありそのうちの7年は港湾及び空港に、3年は道路に、それぞれ関連した業務を行った場合で建設部門の「道路」を受験するような場合は、年数要件を満たしていないと見なされる可能性があるので港湾及び空港に関連した業務を行った7年についても可能な限り道路に関連した業務を記入すること、なぜ「港湾及び空港」ではなく「道路」で受験するのかの十分な説明を口頭試験においてすることの2つが大切と思われます。
選択科目の設定が正しいかどうか分からない場合には、次の(a)、(b)などによって確認します。
 (a)過去問題の参照
数年分の過去問題を見て、最もよく解けそうな選択科目が正しい選択科目である可能性が高いと思われます。
 (b)業務内容詳細の作成
2.2 を参考にして受験申込書の「業務内容の詳細」欄に記入し、これを完成します(以下、「業務内容の詳細」欄に記入した内容を「業務内容詳細」と称します。)。例えば、これなら合格するのではないかと思われる3個程度の自己技量成果(自己技量成果については 2.2、(3)、(d)、(イ)〜(オ) を御覧ください。)を選んで、それに基づいて3個の業務内容詳細を作成し、そのうちの最も書きやすいと感じた業務内容詳細が該当する選択科目が正しい選択科目である可能性が高いと思われます。
「受験部門」、「専門とする事項」についても、同様にして十分に吟味することが大切です。
(2) 業務要件に合致した業務の記入
業務要件に「計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務」とあるので、「業務内容」欄に記入する文言の末尾は、可能な限り、計画、研究、設計、分析、試験、評価、指導のいずれかとします。つまり、「業務内容」欄に記入する文言は、可能な限り、「○○の計画」、「○○の研究」、「○○の指導」などとします。
もし 2.1.1、(a)、(ア) の年数要件で受験する場合は文言の末尾は「補助」となりますが、その場合でも「補助」の直前は可能な限り、計画、研究、設計、分析、試験、評価、指導のいずれかとします。つまり、「業務内容」欄に記入する文言は、可能な限り、「○○の計画の補助」、「○○の研究の補助」、「○○の指導の補助」などとします。
ただし、経歴詐称に当たるような記入をすると「技術士法」第9条により合格取り消しとなるので注意します。
また、当然ながら、単なる試験機器操作、単なる数値計算、単なるプログラム作成などは業務要件に合致しないので、このような業務は記入しないようにします。
(3) 個別業務又は業務範疇の記入
「業務内容」欄には、1つの「業務内容」欄に記入する業務が1つである場合には例えば次の(a)のように個別業務とその成果を記入し、1つの「業務内容」欄に記入する業務が多数ある場合には例えば次の(b)のように業務範疇を記入します。
(a) 河川現況解析(○○地整管内の計○○の一級水系の想定氾濫区域の人口、資産等を解析。全国統一法に新規観点を加味。)
(b) 河川現況解析、河川堤防設計、大規模土砂移動解析、河川堤防漏水防止工設計、干拓地樋門設計等及びその指導
  
上記 (b) では「河川現況解析」、「河川堤防設計」などが業務範疇です。ですから、複数個の河川現況解析を行った場合も単に「河川現況解析」と記し、複数個の河川堤防設計を行った場合も単に「河川堤防設計」と記します。業務範疇が多数あって全部を書ききれない場合は上記のように「等」を用いて他にもあることを示します。
上記(b)で「業務内容」欄に複数の業務範疇を記入した場合はどの業務範疇について「業務内容の詳細」欄に記入したのかが分からないので、「詳細」欄に○印を付ける場合には「業務内容」欄には単一の業務範疇を記入しなければならないと思うかもしれませんが、この場合も「業務内容」欄には複数の業務範疇を記入して構いません。これは、そもそも「業務内容」欄に業務範疇を記入する記入方法自体がどの個別業務について「業務内容の詳細」欄に記入したのかが分からない記入方法なので、単一の業務範疇を記入しても複数のそれを記入してもこれが分からないことには変わりがないからです。
(4) できるだけ詳細な記入
「業務内容」欄は、自分が技術士に相応しいことを謂わば訴え、宣伝するために記入するのですから、そのことがよく分かるようにできるだけ詳しく記入します。例えば、次の(a)、(b)のように記入します。
(a) 2行又は3行記入
できるだけ豊富な情報量を記入します。したがって、1つの欄に記入する文言の量は1行では少な過ぎます。ただ、4行入力すると文字が小さくなって読みづらいので、2行又は3行が適当です。
(b) 5欄の十分な活用
できるだけ5欄全部を用いて記入します。例えば、入社以来4年しか経ってなくてその間ずっと無役の技術員であり、転勤もなく、業務内容も同じであったなど業務経歴が短い場合は、最も簡単に書こうとするなら「勤務先における業務経歴」のいちばん上の1欄だけに記入すれば済みますが、そのような場合でも業務経歴がよく分かるように(つまり、業務要件を十分に満たしていることをよく理解してもらえるように)「業務内容」欄に記入する文言をいろいろと工夫することによりできるだけ5欄全部を用いて記入します。
また、業務経歴が長いが3欄もあれば十分に業務経歴を書き切れるような場合でも、同じ理由により、できるだけ5欄全部を用いて記入します。
(5) 成長の跡の記入は不要
若い頃は補助的業務に就くことが多かったが年を経るにつれて指導の業務に就くことが多くなって来たこと(つまり、受験者の技術力が経験を積むにつれて次第に向上したこと。つまり、成長の跡。)が読み取れるように「業務内容」の欄に記入することはその必要がないと思われます。これは、多くの人は年を経るにつれて指導の業務に多く就くようになりその逆の人はまずいないのでそのようなことをわざわざ示す必要性が低いこと、受験者が所属する組織の性格によっては就職直後の若い頃から指導の業務に就くこともあれば年を経ても指導の業務には就かないこともあるのでそのような所属する組織の性格に大きくよることを合否判定の判断材料とするのは明らかに誤りであること、「技術士法」は単に「計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務」とのみ規定しており「計画、研究、設計、分析、試験、評価」と「これらに関する指導の業務」との間に何らの優劣関係も設けていないので指導の業務に就くことが多くなって来たことを示してもその分だけ有利になるとは考えられないこと、「勤務先における業務経歴」の記載内容の審査はただ単に受験資格を満たしているか否かを確認するために行われることなどの点から見て、成長の跡が読み取れる記入をしたとしてもそれは「勤務先における業務経歴」の記載内容の判定には何ら影響を与えないと推測されることによります。
(6)「地位・職名」欄への立場の記入は不要
「地位・職名」欄に、次の(a)に加えて(b)を併記することはその必要がないと思われます。
(a)「係長」、「部長」など地位・職名を表す文言
(b)「主担当者」、「総括責任者」などその業務に携わったときの立場を表す文言
これは、「地位・職名」欄はその受験者の技術的な経歴の詳細をではなく「勤務先」欄、「所在地」欄などと同様にその受験者の履歴の概要を知るために設けられているものであるので単に地位・職名を記せばそれで十分であると推測されること、係長であったときには例外なく主担当者であったなど自分の経歴上(a)と(b)が1対1に対応している場合は(b)を併記することも可能であるが1対1には対応していない場合は(b)を併記することが困難であること、もし「地位・職名」欄が立場の記入を求めているのであれば「業務内容の詳細」欄がそうであるように立場について記せとの指示があるはずであるが受験申込書にはそのような指示は示されてないこと、「勤務先における業務経歴」の記載内容の審査はただ単に受験資格を満たしているか否かを確認するために行われることなどなどの点から見て、(b)を併記したとしてもそれは「勤務先における業務経歴」の記載内容の判定には何ら影響を与えないと推測されることによります。
(7) 丸印の記入
「業務内容の詳細」欄に書く業務(つまり、2.2、(3)、(d)、(イ) に言う「最も大きな成果を上げた」業務)を選び、その業務の行の「詳細」欄に丸印を記入します。

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2.2「業務内容の詳細」の書き方

 「試験と申込書の書き方」の2 は「口頭試験は、(中略)業務経歴を踏まえ実施する」としている(2、(2) の項)ので、受験申込書の「業務内容の詳細」欄に書いた内容(つまり、業務内容詳細)は口頭試験の対象となります。したがって、業務内容詳細の内容には十分な注意が必要であり、次の (1)〜(3) に留意して記述するのがよいと思われます。
(1) 受験部門、選択科目、専門とする事項に合致した業務内容詳細の作成
受験申込書に記入した受験部門、選択科目、専門とする事項と業務内容詳細とが合致しない場合は、口頭試験で不合格となります。ある程度合致するがあまりよく合致しない場合は、口頭試験で多くの質問を受け窮地に立つことになります。したがって、よく合致する業務内容詳細を、かつ合致していることがよく分かるように記入します。
通常は、業務経歴票に記入する事項のうちでは業務内容詳細が最も作成し難いので、業務内容詳細に何を書くかをまず決めて、その内容に合致する受験部門、選択科目、専門とする事項を決めるのが順番としては進めやすいかもしれません。
(2) 当該業務での立場、役割
「業務内容の詳細」欄には、「勤務先における業務経歴」の「詳細」欄に丸印を記入した業務について業務内容の詳細を記入します。
「業務内容の詳細」欄には「当該業務での立場、役割、成果等」を書くようにとの指示があるのでまず「当該業務での立場」を書きたくなりますが、それを書く前に業務概要を書かなければなりません。もし、2.1.3.2、(3)、(a)の方法で記入していた場合は「業務内容」欄に業務名称が示されているので業務概要がだいたい分かりますが、それでも業務名称だけでは試験委員が知りたい業務概要は分からない場合が殆どです。ましてや、(b)の方法で記入していた場合は、全く分かりません。したがって、「業務内容の詳細」欄の1行目には「業務概要」という項目を設けて、「業務経歴票」の「詳細」欄に丸印を記入した業務の概要(つまり、業務名称、業務目的、実施位置、数量、工期などの全部又はいくつか)を記述します。例えば、「○○市の丘陵地の下水道設計、総延長○○km」などのように記述します。
次に、その業務について「当該業務での立場、役割」を書きますが、全体で720字という制限がありまた立場と役割は分かりさえすればよいので、字数節約のために両方をまとめて1行程度で簡単に書きます。例えば「立場、役割」のような項目を設けて「責任者として業務全体を担当した。」のように書きます。もし、業務実施結果を論文にして発表している場合で、その論文を業務内容詳細に書く場合で、かつその論文が共著である場合は、自分が筆頭著者である論文を書くようにします。これは、一般に、筆頭著者以外は「責任者として業務全体を担当した」とは認められにくいからです。
「立場」とは、その業務を補助担当者、主担当者、責任者、リーダー、主任技術者、管理技術者、総括者、調整役などのいずれとして実施したかです。ただ、技術士に求められるのは「高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務」(「技術士法」第2条)を自ら行う能力であるため、補助担当者として実施したよりは主担当者、責任者、リーダー、主任技術者、管理技術者、総括者、調整役などとして実施したと記述した方が評価が高くなるので、できるだけそのように記述します。どうしても補助担当者としか書けない場合は、補助担当者ではあるが実質上責任者として業務を実施した旨、又は業務全体から見れば補助担当者であるが業務内容詳細に書いた部分については責任者であった旨を明示します。
「役割」とは、当該業務のうちのどの部分を担当したかです。
もし、業務実施結果を論文にして発表している場合で、その論文を業務内容詳細に書く場合で、かつその論文が共著である場合は、自分が筆頭著者である論文を書くようにします。これは、一般に、筆頭著者以外は責任者として業務全体を実施したとは認められにくいからです。
(3) 成果等
「成果等」は、例えば次の (a)〜(d) のように記述します。
次の (a)〜(d) のように「課題」〜「成果」の4つの項目を設けて分けて記述するのは「成果」の妥当性(つまり、信頼性)と「成果」の素晴らしさの2つを試験委員によく理解してもらうためなので、これら4つの項目を設けずこれらの全体を1続きの文章で記述するなど他の記述形式を採用することももちろん自由です。ただ、どのような形式を採用しても、その中にこの「課題」〜「成果」の4つの内容が実質的に明確に示されていることが必要と思われます。
 (a) 課題
「課題」という項目を設けて、当該業務の課題を記述します。課題とは、(2)で記述した業務概要と次の「(b)問題点」とを橋渡しする事項です。業務概要の次にいきなり「(b)問題点」を書いても何故そのようなことが問題なのかが分かり難い場合に、「(b)問題点」に抵抗なく入っていけるように書く事項です。例えば、「路線上に存在が予想される湧水帯の処理、市の重点項目であるライフサイクルコストの最小化。」などです。
したがって、もしそのような説明をしなくても「(b)問題点」の内容がよく分かる場合は「課題」の項は不要です。
 (b) 問題点
「問題点」という項目を設けて、当該業務又は上記の「課題」を遂行するうえで大きな障害となった事項(つまり、それを解決したのでその業務を無事に完了することができた事項。)を記述します。
 (c) 提案
「提案」という項目を設けて、上記の問題点を解決するために自分が行った提案を記述します。
 (d) 成果
「成果」という項目を設けて、上記の提案を実施した結果得られた成果を記述します。このとき、次の (ア)〜(サ) などに留意して記述するのが望ましいと思われます。
(ア) 自己技量成果の記述
「自分の技量で上げた成果」、つまり「自分が工夫して自分のアイディアで得た成果」、つまり「もし自分がこの業務に携わっていなければ失敗に終わったと思われることを自分の力で成功に導いた成果」(以下、これを「自己技量成果」と称します。)を記述します。
自己技量成果は、仕様書や上司からの指示によるのではなく、自分で業務実施上の問題点を見出し、自分でその解決案を立案し、自分でその解決案を実行して業務を成功へと導いて行くことができることの証明です。つまり、自力で「計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務」(「技術士法」第2条)を行うことができることの証明です。
自己技量成果は、別の言い方をすると、自分がした工夫とも言えます。技術士としてふさわしい業務実績、技術士にふさわしい業務実績とも言えます。技術士資格を既に有している者が上げるであろう業務実績と同等の業務実績も言えます。
自己技量成果は、受験者から見ると「これだけの成果を上げたのだから、技術士と同等の能力を有していることが明らかだ。技術士資格をよこせ。」という請求書であり、試験委員から見ると技術士に相応しいか否かを判断する最も重要な判断材料の 1 つです。明確に記述します。
(イ) 自己技量成果の源は「困った」、「おかしい」
自己技量成果と言われてもそんなものはないと思うかもしれません。しかし、1つの業務を実施する過程では、必ず1つや2つは問題が生じたはずです。問題とは「困った」、「おかしい」です。「困った」とは、例えば予算が足りない、工期が短すぎる、客先からの注文が多すぎる、人がいない、材料がない、実験結果が予想に反したものとなった、不具合の原因が全く分からない、利害関係者が多くて意見調整ができない、先行業務に誤りがあることが判明したが今からではそれを修正できない、・・・などなどです。「おかしい」とは、例えば仕様書のとおりに実施すると多額の無駄な経費をかけることになる、現計画のとおりに実施すると品質を保証できない可能性が高い、この業務は通り一遍のやり方で何の問題もなく完了すると予測されるがそれでいいのか、・・・などなどです。しかし、今は既にその業務を完了しているのですから、その問題が生じたときに何らかの工夫をしてそれを解決したはずです。その解決の過程と結果が自己技量成果です。ですから、自己技量成果は探せばいくらでもあるはずです。それらのうちから最も大きな成果を上げたものを「成果」として記入します。最も大きな成果を上げたものとは、その業務が実行不能になるほどの大問題を解決したもの、最も多額の経費削減を達成したもの、最も大きな品質改善を達成したもの、最も素晴らしいアイディアを出したもの、それまでの考え方を最も大きく転換したものなどです。
(ウ) 数値による自己技量成果の記述
自己技量成果は、試験委員がよく理解できるようにするために、可能な限り数値で記述します。例えば、「材料を大きく節減することができた」ではなく、「材料を約51kg、26%節減することができた」のように記述します。
(エ) 自己技量成果の高低、大小、新旧は不問
もし自己技量成果が高度技術に関する成果、巨額の経費削減を達成した成果、大型業務における成果、最新の技術に関する成果、最近に実施した業務における成果などであればそれに越したことはありませんが、このようなことは自己技量成果に求められる必要条件では全くありません。低度技術に関する成果、少額の経費削減を達成した成果、小型業務における成果、古い技術に関する成果、ずっと以前に実施した古い業務における成果でなどであっても、それが自らの自己技量成果でありさえすれば「成果」として記述するに十二分に値するものであると思われます。
これは、例えば高度技術の業務を担当すれば自己技量成果も高度技術に関するものとなるなど自己技量成果の高低、大小、新旧は自分がどのような業務を担当するかに大きく依っており、かつ自分がどのような業務を担当するかは自分が所属している組織の特性、組織内での上司の指示、転勤など自分の希望や力では選択することができない条件によるところが大きいからです。自分の希望や力では選択することができないことを技術士試験の合否判定の判断材料とするのは明らかに誤りだからです。
(オ) 自己技量成果の確定・未確定は不問
自己技量成果は、その妥当性が客観的に確定した段階のものであることが望ましいです。例えば、橋梁基礎地盤設計が自己技量成果である場合、できればその基礎地盤設計に基づいて既にその橋梁が建設、供用開始され安全性が確認されていることが望ましいです。しかし、このようなことは自己技量成果に求められる必要条件では全くありません。例えば、橋梁基礎地盤設計が自己技量成果である場合、橋梁基礎地盤設計しか完了しておらず建設には全く未着手である段階のものであっても「成果」として記述するに十二分に値するものであると思われます。
これは、例えば橋梁基礎地盤設計が完了してからその橋梁が供用開始されるまでには短くても数年の時間が必要であるなど一般に自己技量成果の妥当性が客観的に確定するには相応の時間が必要ですが、経験年数の少ない受験者(つまり、若い受験者)の場合はそのような時間がない場合が多いからです。技術士試験は年齢に関わらず優秀な技術者を発掘することを目的としているので、受験者が若いことをもって受験者に不利な判断材料とするのは明らかに誤りだからです。
(カ) 既定方針に従って実施したことのみの記述の回避
既定方針に従って業務を実施したことのみを「成果」として書くことは控えなければなりません。例えば、次の(i)〜(vi)などのことは控えなければなりません。
(i) 実施した業務の内容(数量、工期、実施方法、結果など)のみを書く。
(ii) 関係する多数の仕様、規程、基準、指針などを漏れなく調べ上げてそれら全てに違わないように実施したことのみを書く。
(iii) 工期の短い大型業務を工期内に遅滞なく実施したことのみを書く。
(iv) 新技術や高度な技術を採用して実施したことのみを書く。
(v) 上記(i)〜(iv)のうちのいくつか又は全部を組み合わせた内容のみを書く。
(vi)「成果」の項の記述の多くを上記(i)〜(iv)の記述に割く。
これは、このようなことは技術士でなくても行うことが十分に可能だからです。つまり、このようなことは「成果」の項が求めていることとは無縁だからです。
(キ) 他からの評価のみの記述の回避
「業務完了後、客先から○○のお褒めの言葉を頂戴した」、「この業務に関連して○○賞を受賞した」などのことを記述するのは構いませんが、これは単なる他からの評価です。自己技量成果ではありません。他からの評価を記述する前に必ず上記 (ア) の自己技量成果を具体的に記述することが大切であり、その記述なしにあるいはその記述を十分に完成することのないままに他からの評価を「成果」として記述することは控えなければならないと思われます。当該業務に関連しての特許取得、論文発表、資格取得なども同様と思われます。
これは、その「成果」が技術士試験合格に相応しいものであるか否かの判断は専ら試験委員の専決事項であって試験委員以外が行うことではないからです。つまり、他からの評価はあくまで刺身の妻だからです。
(ク) 口頭試験での説明を考慮した記述
口頭試験においては業務内容詳細を口頭で説明することを求められると推測されますが、この説明のときに最も大切なことはわくわく感を持たせるように説明することです( 「第二次講座筆記論文記述式問題」の3.2、(2) )。口頭試験においてそのように説明するためには、「成果」の項をそのような説明をしやすい形に記述しておくことが大切と思われます。特に、「第二次講座筆記論文記述式問題」の3.2、(2) に言う(ア)事業が頓挫しかけていた、(イ)解決案については○○の不安があった、(ウ)これを解決するために○○の詳細検討を実施した、の3点を簡潔に分かりやすく記述しておくことが大切と思われます。
(ケ) 自己完結度高い記述
「成果」を読んだときにその内容に疑問や不審を持つと試験委員はそれを解消するために口頭試験の場で多くの質問を発するので、「成果」を記述するに当たっては、「そこそこ書いておこう」、「気楽に行こう」のような考えは禁物です。試験委員がその内容に疑問や不審を持たないように、細心かつ最大の注意を払って、分かりやすく、論旨明快に、自己完結度高く仕上げる必要があると思われます。
(コ) 最初に「成果」の完成
既にお気づきと思いますが、上記 (ア)〜(ケ) のように成果を書くためには、 (ア)〜(ケ) のように書けるように上記 (a)〜(c) ができてなければなりません。つまり、書く順番としては、まず (ア)〜(ケ) によって (d) を書き上げ、最後に (a)〜(c) を書きます。
(サ) 技術士の方の意見の拝受
もし可能であればですが、受験申込書の「業務内容の詳細」欄を完成して、記入後に複数の、経験の深い、自分と同じ選択科目の技術士の方に見てもらうのがよいと思われます。
技術士の方に見てもらうのは、自分で書いた業務内容詳細の問題点を口頭試験で試験委員が指摘し、質問してくるわけですが、そのような問題点に自分では気づかないこともあるからです。
複数の方に見てもらうのは、技術士の方でもお1人ずつ専門、経験、興味の中心などが異なるので、同じ1つの「成果」を見てもらっても、ある方は「これは業務内容詳細として全く相応しくない。」と仰るのに他の方は「これは業務内容詳細として相応しい。」と仰るなど、大きく異なる御意見を頂くこともしばしば出てくるからです。つまり、個々の技術士の方の仰ることが必ずしも一致せず、また必ずしも正しいとは限らないからです。
経験の深い方に見てもらうのは、技術士試験に合格して数年しか経ってないほやほやの方と合格した後に更に10年、20年の長期間の経験を積んだ方とでは自ずと着眼点が大きく異なり、しかも試験委員は例外なく後者のような方だからです。
自分と同じ選択科目の技術士の方に見てもらうのは、選択科目が異なると頂く御意見が上滑りになり技術的内容に踏み込んだ御意見を頂けないからです。例えば、自分が「鋼構造及びコンクリート」で受験する場合に「土質及び基礎」の技術士の方に見てもらっても技術的内容に踏み込んだ御意見を頂けないからです。もし有料で見てもらう場合でその技術士の方の選択科目が自分と異なる場合は、その方が自分と同じ選択科目の業務について少なくとも実際の業務経歴は十分に有していることを事前に確認しておくのがよいと思われます。
なお、業務内容詳細は「大学院における研究経歴/勤務先における業務経歴」欄の記入内容、受験部門・選択科目・専門とする事項欄の記入内容の2つと関連すること、「大学院における研究経歴/勤務先における業務経歴」欄の記入内容はそれ単独でも合否に関わる重要な項目であることなどにより、業務内容詳細を見ていただくときには受験申込書の全体を完成しておき、受験申込書の全体を見ていただくのがよいと思われます。
技術士が何百人もいるような大きな組織の多くでは組織としての受験支援体制も確立しておりまた自分の受験予定の選択科目と同じ選択科目の多数の技術士が日頃から机を並べて業務をしているので受験に関する相談もし易く、その意味で、自分の受験予定の選択科目と同じ選択科目の技術士が組織全体で1人もいないような小さい組織に所属する受験者は少し不利な状況にあることは否めません。この不利を埋めるためには外部の技術士の方の援助を仰ぐことも一策と思われます。このような援助を有料、無料で行っている組織もあるようですので、御相談されるのがよいかもしれません。
(シ) 自力による十分な吟味
しかし、技術士の方に見てもらったからこれで大丈夫だと安心するのは早計ですし、技術士の方に見て貰う機会がないと言って嘆く必要もありません。なぜなら、技術士の方も、上記のように御自分の専門、経験、興味の中心などに基づいて最も重要と思うことをしかも限られた時間の中で指摘してくださるのみであるからです。全てについて完璧な視点から指摘していただくことを期待するのはそもそも無理だからです。
「この自己技量成果はこの選択科目に合致しているか」、「何が自己技量成果であるかを明確に示せているか」、「句読点、文字強調、改行など文字列推敲は1字1句まで詰め切れているか」、「言葉、術語、言い回し、冗長散漫表現、章立てなど文章推敲は詰め切れているか」、「全体を一気に読み通したときに好印象を持てるか」、「もし自分が試験委員であってこの受験者を不合格にしようと思ったら、この業務内容詳細のどこをどのようにつついてやるか」などと細部に亘ってよくよく自問自答すれば、問題点は自ずと見えてきますし、そのようにして多くの点について自分でよく吟味しておいた方が口頭試験で試験委員から思いがけない質問をされたときに狼狽えないで対応できます。技術士の方に見ていただくことは、問題点を洗い出すよいきっかけにはなりますが自分で十分に吟味することには遥かに及びません。自分で十分に吟味することだけが漏れのないかつ抜本的な改善を可能にすると思われます。
また、業務内容詳細を完成した後に、「大学院における研究経歴/勤務先における業務経歴」欄の記入内容、受験部門・選択科目・専門とする事項欄の記入内容の2つと業務内容詳細との整合性についても自分で十分に再吟味することが重要と思われます。
(ス) 補足
なお、受験申込書に 2.2、(3)、(d)、(カ)、(i)〜(vi) のようなこと(以下、これを「単純実施成果」と称します。指示に基づいて業務を単純に実施したという成果という意味です。)のみを書いてかつ口頭試験でもそのようなことのみ説明すると(つまり、自己技量成果を何も書かず何も説明しないと)合格しない、ということでは当然ながら決してありません。そのようにしても実力があれば十分合格すると思われます。ただ、同じ実力の方が 2 人いて、1 人は自己技量成果を書いて説明し、他の 1 人は単純実施成果のみを書いて説明したとすると、自己技量成果を書いて説明した方のほうが評価つまり合格する確率が遥かに高くなると思われます。

「技術士制度における総合技術監理部門の技術体系」の更新と訂正 2016年版

2.3 受験申込書についてのその他の留意点

2.3.1 書き方の技術上の詳細
 受験申込書の書き方の技術上の詳細は、「試験と申込書の書き方」の57 にあります。
2.3.2 余裕を持った提出
 提出した受験申込書は提出後すぐに点検され、この点検で記入漏れ、間違い、年数要件不適合などが認められた場合は日本技術士会はその申込書を受験者に返送するので、修正のうえ再提出しなければなりません。この修正、再提出に余裕を持って対応できるように、最初の提出は申込期限の10日程度以上前に行うのがよいと思われます。
2.3.3 早期の準備開始
 「業務内容の詳細」の完成にはかなりの時間を要し、また 2.3.2 に示すように受験申込書は早めに提出する必要があります。また、受験申込書の様式はここ数年変化がなく全く同じです。したがって、「業務内容の詳細」の作成は、古い年度の受験申込書を日本技術士会のwebサイト(こちら)からダウンロードしてそれを用いて、2.2 を参考にして、年明け早々には始めるのがよいと思われます。
2.3.4 コピーの保存
 1 で述べたように受験申込書は「第二次試験答案」ですので、口頭試験に合格するためにはこれに記入したことをよく覚えておかなければなりません。したがって、提出前に受験申込書のコピーを取っておくのがよいと思われます。

3. 総監の「業務経歴票」の書き方

3.1「勤務先における業務経歴」の書き方

 総監以外の部門(以下、これを「他部門」と称します。)では単に 5 つの管理技術の 1 つ又は幾つかを駆使して業務を実施するだけですが、総監ではこれに加えて『業務全体の俯瞰的な把握・分析に基づき』『技術業務全般に対する総合的な判断を行』い『最適決定を行』います(『』内は「技術士制度における総合技術監理部門の技術体系(第 2 版)(公益社団法人日本技術士会 2004)」(以下、これを「総監の技術体系」と称します。その表紙が青色であることから「青本」と通称されている書籍です。)、2、3、13ページから引用。)。つまり、他部門と総監との違いは、実施した業務の内容にではなく実施した業務の進め方にあります。
 しかし、2.1.1、(b)2.1.3 に示すように、受験申込書の「勤務先における業務経歴」欄は業務要件を満たしているか否か(つまり、業務の内容が妥当か否か)を判定するためのものであり業務の進め方を判定するためのものではありません。業務の進め方は「業務内容の詳細」に基づいて判定されます。
 したがって、総監の受験申込書における「勤務先における業務経歴」欄の書き方は他部門のそれ(2.1)と何ら変わることがなく全く同じであると思われます。

3.2「業務内容の詳細」の書き方

 「業務内容の詳細」には「当該業務での立場、役割、成果等」を記述するように指定されていますが、総監受験の場合は単にこれらを記述するのではなく、これらを総合技術監理の視点から記述しなければなりません。総合技術監理の視点から記述するとは、総合技術監理の内容をよく理解していること、既に総合技術監理を実施していること、既に総合技術監理に関して総監技術士資格保有者と同等の成果を上げていることなどを明示するということです。したがって、「業務内容の詳細」は次の (1)〜(3) に留意して記述するのがよいと思われます。
(1) 選択科目、専門とする事項に合致した業務内容詳細の作成
これについては他部門とほぼ同様ですので、2.2、(1) を御覧ください。
(2) 当該業務での立場、役割
これについては他部門とほぼ同様ですので、2.2、(2) を御覧ください。
(3) 成果等
 上記 (1) の業務について、次の (a)〜(c) を記述します。
 (a) 課題と問題点
当該業務を進める上での、単なる技術上の課題と問題点についてではなく、総合技術監理の視点からの課題と問題点について記述します。
総合技術監理の視点から記述するとは上記のとおりですので、例えば「総監の技術体系」に示される 5 つの管理技術のいずれか又は全部について、各管理技術名を見やすく配置して管理技術別に記述します。例えば、「経済性管理の問題点は○○であった。人的資源管理の問題点は○○であった。」のように記述します。もし業務内容や問題点の特殊性などのために管理技術別に書くことができない場合でも、管理技術名を明確に示して記述します。
 (b) 提案
上記問題点を解決するために行った、単なる技術上の提案ではなく、総合技術監理の視点からの提案を記述します。
 (c) 成果
上記 (b) の提案を実施した結果得られた成果を記述します。このとき、次の (ア)、(イ) などに留意して記述するのが望ましいと思われます。
  (ア) 自己技量成果の記述
自己技量成果を記述します。自己技量成果については 2.2、(3)、(d)、(ア)〜(ケ) を御覧ください。
  (イ) 総合技術監理の視点からの記述
総監の試験なので、当然ですが、自己技量成果は総合技術監理の視点から記述しなければなりません。詳しく言えば次の (i)〜(v) のように記述するということです。
(i) 管理技術別の記述
上記 (ア) の自己技量成果を、(a) で記述した問題点別に記述します。
また、自己技量成果が複数の管理技術分野の複数の問題点の総合的解決の結果である場合は、そのことがよく分かるように記述します。
(ii) キーワードを用いた記述
「総監の技術体系」の【第○章 Key Words】 という標題のページに示される用語(以下、「総監の技術体系」の【第○章 Key Words】 という標題のページに示される用語の全体を「Key Words」と称します。また、以下、「総監の技術体系」の【第○章 Key Words】 という標題のページに示される用語の1つひとつを「キーワード」と称します。)を用いて記述します。Key Words のうちのどれを用いるかは業務内容詳細の内容に合わせて適宜判断しますが、トレードオフ、最適化、人間関係管理、ナレッジマネジメント、リスクマネジメント、環境マネジメントなど総監の特徴をよく表すキーワードをできるだけ用いるように努めます。業務内容詳細全体で 720 字以内という字数制限があるので用いるキーワードの数は自ずと限られますが、1 管理技術当たりできるだけ 1 個は用いるように努めます。
(iii) 総合技術監理を行ったことの記述
総合技術監理において最も重要なことの1つは「業務全体の俯瞰的な把握・分析に基づき」「技術業務全般に対する総合的な判断を行」い「最適決定を行」うことです(「」内は「総監の技術体系」、2、3、13ページから引用。)ので、これを行った過程がよく分かるように記述します。
(iv) 口頭試験で説明し易い記述
口頭試験において上記(iii)の過程を説明する場合は 「総監講座口頭」の3.2、(ア)〜(キ)のように説明するので、この説明をし易いように記述します。
(v) やさしい記述
やさしく記述します。総監は 20 の技術部門全てを網羅するにも関わらず受験者が 3,000 人程度と少ないので、少ない試験委員で広い範囲を担当しなければなりません。そのため、試験委員は厳密には自分の専門外である論文も読みあるいは面接しなければならない場合も生じます。そのような場合を考えて、専門用語と専門的な表現を少なくし、誰にでも分かる平易な記述にします。
既に他部門の技術士資格をお持ちの方にとっては純粋に技術的な自己技量成果を上記 (i)〜(v) の形に脚色するくらいは容易いことではないかと思われます。しかし、合格するためにはこの総合技術監理の視点からの記述が根本的に重要であり、この形に脚色しない限り合格は困難と思われます。

3.3 他部門と共通の事項

 上記のほか、総監の受験申込書の書き方については他部門と共通する事項もたくさんあります。そのような事項については 2 を御覧ください。

4. 口頭試験受験上の留意点


 上記のように、業務経歴票の書き方は口頭試験と密接に関連しているので、業務経歴票を書く前に口頭試験受験上の留意点を見ておくことをお勧めします。口頭試験受験上の留意点については、総監以外の部門については 「第二次講座口頭」を、総監については 「総監講座口頭」 を、それぞれ御覧ください。


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