技術士試験講座





(2020.05.05 更新)
(2016.11.15 更新)
(2016.09.01 更新)

総合技術監理部門 (4)口頭試験合格法、合格率、不合格理由

(本ページは主に総監の口頭試験について記載しています。)

         総監以外の部門の口頭試験は こちら

         総監の記述式問題は こちら


技術士試験総合技術監理部門キーワード事典2010年版

1. 口頭試験の概要

1.1 口頭試験の手順

1.1.1 総合技術監理部門以外の部門
(1) 待機
本項(1.1.1)では、総合技術監理部門(以下、これを「総監」と称します。)以外の部門(以下、これを「一般部門」と称します。)の口頭試験の手順について記します。総監については次の 1.1.2 を御覧ください。
口頭試験会場は、例年、東京渋谷にあるフォーラムエイト(FORUM 8)というビルです。このビル内の指定された受付に行き受付を済ませると、控え室を指定され自分の面接開始時刻の少なくとも 10 分前には控え室にいるように指示されるので控え室で待機します。控え室は 50〜60 名くらい入る大きな部屋で、禁煙で、待機中の人が常時 10 人くらいいます。控え室ではなく近くの喫茶店など別の場所で待機することは自由です。
面接開始時刻の 10 分前になったら、係員が控え室に来て自分の受験番号を「○○番の方。」と呼ぶので、その係員の指示に従って面接室の前の廊下へ移動して、そこの長椅子に座って試験の開始を待ちます。
移動するときに荷物の一部又は全部を控え室に置いておくことは許可されません。
(2) 入室
面接室の中から係員が出てきて「○○さんですか。」、「どうぞお入りください。」と言うので指示に従って入ります。このときもしドアが閉まっていたら、ドアをノックをして中からの応答を確認した後に入ります。
面接室は 30 人くらいは入れる比較的大きな部屋で、事務用の小型テーブルを前にして試験委員が 2 名(場合によっては 3 名)座っており、試験委員の正面 3m くらい離れた位置に受験者が座る椅子が置かれており、その傍に荷物置き台があります。試験委員のうち 1 名の方が全体の司会役であり 「技術士試験の概要」の 2 に言う「技術士としての適格性」の担当を兼ねており、他の 1 名の方が「技術士としての実務能力」担当の試験委員です。
受験者用の椅子の横まで行き、「受験番号○○番の、○○です。よろしくお願いします。」と受験番号、氏名を告げます。
荷物を置く場所を指示されたら「ありがとうございます。」と言ってからそこに荷物を置きます。言われる前に置いたり、何も言わないで置いたりしないようにします。
「お座りください。」と言われたら「失礼します。」と言ってから座ります。言われる前に座ったり、何も言わないで座ったりしないようにします。
(3) 試験
試験時間は 20 分です。ただ、解答に手間取ると 10 分程度を限度として延びることがあります。
試験は、試験委員が試問し受験者がそれに答えることを繰り返す形で進められます。
「技術士試験の概要」の 2 は、試問内容は次の (a)、(b) のようであるとしています(ただし、(a)、(ア)、(i) など各項目の行頭の記号のみは、見やすさのため変更して引用してあります。)。
【】内は、「技術士試験の概要」の 2 においてその試問内容が記述されている項目番号です。
 <>内は、試問の対象となると推測される文書です。アートプランが加筆した事項です。
 ≪≫内は、試験委員が試問方針を決めるときに参考にすると推測される文書です。アートプランが加筆した事項です。
(a) 筆記試験における記述式問題の答案及び業務経歴を踏まえ実施する【2.、(2)、②の項】
(b) 試問事項【2.、(2)、③の項。2.、(3)、②の項。】
  (ア) 技術士としての実務能力
(i) コミュニケーション、リーダーシップ
 <(α)受験申込書のうち「大学院における研究経歴/勤務先における業務経歴」欄(以下、これを「業務経歴票」と称します。)の記入内容、(β)受験申込書のうち「業務内容の詳細」欄の記入内容(以下、これを「業務詳細」と称します。)、(γ)記述式問題答案>
 ≪(α)「技術士法」第2条、(β)「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」(科学技術・学術審議会技術士分科会、2014)≫
(ii) 評価、マネジメント
 <上記 (i)、<>内に同じ>
 ≪上記 (i)、≪≫内に同じ≫
  (イ) 技術士としての適格性
(i) 技術者倫理
 <(なし)>
 ≪ (α)「技術士法」第 4 章、(β)公益通報者保護法、(γ)技術士倫理綱領(これらは「第二次口頭」の 6.2 に言う「基準文書」です。)≫
(ii) 継続研さん
 <(なし)>
 ≪(α)技術士 CPD(継続研鑚)ガイドライン、(β)「 技術士法」第 47 条の二(これらは「第二次口頭」の 6.3 に言う「基準文書」です。)≫
試問は(a)、(b)に基づいて行われます。
技術担当の試験委員は事前に (ア)、(i)、(ii) の<>内の (α)〜(γ) の文書計 3 つの文書(以下、これを「一般提出文書」と称します。)をよく読んで問題点の整理を済ませたうえで待ち受けています。(ア) については、例えば「経歴を 2 分程度で説明してください。」、「業務内容の詳細に書いた業務について 3 分程度で説明してください。」のような導入の質問の後は、通常、(ア) のうちで最も問題が大きいと試験委員が考える事項から順に質問します。(イ) については、受験者がどのような知識を有しているかについて試験委員は事前には何も情報を得ていないので、試験委員はこの程度の知識は必要だという一般的な水準を決めてそれを満たしているかどうかを確認する質問をします。
上記 (ア)、(i)、(ii) の<>内の (α)、(β) の文書の書き方については「技術士第二次試験講座 (1)受験申込書の書き方」(以下、これを「第二次申込書」と称します。)を、(γ) の文書の書き方については「技術士第二次試験講座 (2)筆記試験合格法」を、それぞれ御覧ください。
上記の他に受験動機について質問されることがあり、その場合は (ア) の一部として質問されることが多いですがまれに (イ) の一部として質問されます。
もしホワイトボードなど受験者が説明のために利用できるものが試験室内にある場合は、試験委員の許可を得たうえであればそれを利用することができます。ただ、ホワイトボードなどは口頭試験用に用意したものではなく単なるその部屋の備品ですのでそのようなものがない場合もありますし、試験委員が使用を許可しない場合もあると推測されるので、ホワイトボードなどで説明することを前提にして準備することは危険です。
試験中は資料を見ること、メモを取ること、録音することは許可されません。
(4) 退室
試験終了後は、椅子の傍に立って「有り難うございました。失礼します。」と言ってから退室します。
試験終了後は控え室に戻ることは許可されません。
1.1.2 総監
(1) 待機
  上記 1.1.1、(1) と同じです。
(2) 入室
  上記 1.1.1、(2) と同じです。
試験委員のうち 1 名の方が全体の司会役であり 「技術士試験の概要」の 2 に言う「体系的専門知識」の担当を兼ねており、他の 1 名の方が「経歴及び応用能力」担当の試験委員です。
(3) 試験
試験時間は 20 分です。ただ、解答に手間取ると 10 分程度を限度として延びることがあります。
試験は、試験委員が試問し受験者がそれに答えることを繰り返す形で進められます。
「技術士試験の概要」の 2 は、受験者が一般部門の技術士資格を有している場合は、試問内容は次の (a)、(b) のようであるとしています(ただし、(a)、(ア)、(i) など各項目の行頭の記号のみは、見やすさのため変更して引用してあります。)。
【】内は、「技術士試験の概要」の2 においてその試問内容が記述されている項目番号です。
 <>内は、試問の対象となると推測される文書です。アートプランが加筆した事項です。
 ≪≫内は、試験委員が試問方針を決めるときに参考にすると推測される文書です。アートプランが加筆した事項です。
(a) 筆記試験における記述式問題の答案及び業務経歴を踏まえ実施する【2.、(2)、②の項】
 (b) 試問事項【2.、(2)、③の項。2.、(3)、②の項。】
  (ア)「総合技術監理部門」の必須科目に関する技術士として必要な専門知識及び応用能力
(i) 経歴及び応用能力
 <(α)業務経歴票の記入内容、(β)業務詳細、(γ)記述式問題答案>
 ≪(α)「技術士法」第2条、(β) 「総合技術監理キーワード集 2020」(以下、これを「キーワード集」と称します。)≫
(ii) 体系的専門知識
 <(α)業務詳細、(β)記述式問題答案、(γ)択一式問題答案>
 ≪上記 (i)、≪≫内に同じ≫
試問は (a)、(b) に基づいて行われます。
試験委員は 2 名とも事前に (i)、(ii) の<>内の計 4 つの文書(以下、これを「総監提出文書」と称します。)をよく読んで問題点の整理を済ませたうえで待ち受けています。
「経歴を 2 分程度で説明してください。」、「業務内容の詳細に書いた業務について 3 分程度で説明してください。」のような導入の質問の後は、通常、(b)、(ア) のうちで最も問題が大きいと試験委員が考える事項から順に質問します。
また、(a) が「記述式問題の答案」「を踏まえ」としているので (ii)、(γ) の「択一式問題の答案」は通常は口頭試験の対象にならないと解されますが、(ii) の「体系的専門知識」とは総合技術監理に関する知識ですので、択一式問題の得点が著しく低い場合(恐らくは、20 点(50 %)未満程度の場合)は (ii) の一部として試問される可能性があります。
上記 (i) の<>内の (α)、(β) の文書の書き方については「総合技術監理部門講座 (1)受験申込書の書き方」(以下、これを「総監申込書」と称します。)を、(γ)の文書の書き方については「総合技術監理部門講座 (3)記述式問題の書き方」を、それぞれ御覧ください。
上記の他に受験動機について質問されることがあり、その場合は (i) の一部として質問されることが多いですがまれに (ii) の一部として質問されます。
もしホワイトボードなど受験者が説明のために利用できるものが試験室内にある場合は、試験委員の許可を得たうえであればそれを利用することができます。ただ、ホワイトボードなどは口頭試験用に用意したものではなく単なるその部屋の備品ですのでそのようなものがない場合もありますし、試験委員が使用を許可しない場合もあると推測されるので、ホワイトボードなどで説明することを前提にして準備することは危険です。
試験中は資料を見ること、メモを取ること、録音することは許可されません。
(4) 退室
  上記 1.1.1、(4) と同じです。
 もし選択科目も受験した場合(つまり、総合技術監理部門と一般部門とを併願した場合(「併願」の意味については「第二次試験のよくあるご質問」、「Q:併願とはどのような申込みですか。」を御覧ください。))は、上記の他に、1.1.1、(3) と同じ内容の口頭試験も行われますが、これは総監の口頭試験とは別の日に一般部門の口頭試験として行われます。

1.2 口頭試験の合格率と不合格原因(不合格理由)

1.2.1 口頭試験の合格率
 過去数年の実績では口頭試験の合格率は概ね 90 % です。つまり、よほどのことがない限り口頭試験では不合格にはならないのでその点は一応安心です。しかし、もし不合格になると、再度筆記試験から受け直さなければならないこと、口頭試験で不合格になったという目で周囲から見られることの 2 つのため精神的な打撃はかなり大きいので、できれば 1 回で合格したいものです。
1.2.2 主な不合格原因
(1) 提出文書の不首尾
一般提出文書又は総監提出文書(以下、これらを「提出文書」と称します。)に大きな不首尾があると、試験委員はそれに的を絞って質問してきます。そのため、提出文書に大きな不首尾がある場合は多くの場合に、解答しても試験委員の満足を得ることができない状況になり不合格となると思われます。
口頭試験で不合格になった場合には再度筆記試験から受け直さなくてはなりませんが、これは口頭試験不合格の原因が多くの場合に口頭試験における受け答えにではなく提出文書の不首尾にあることによります。つまり、筆記試験を受け直さない限り提出文書の不首尾を改善できないことによります。
口頭試験不合格の原因としてはこれ(提出文書の不首尾)が最も多いようです。口頭試験で不合格となった方からお聞きしたところでは、口頭試験で不合格となった方の 7〜8 割程度はこれが原因ではないかと推測されます。
したがって、提出文書に不首尾があって合否決定基準すれすれにいる場合は口頭試験においてその不首尾を挽回することが何よりも重要であると思われます。挽回のための方策については、一般部門については 「技術士第二次試験講座 (3)口頭試験合格法」(以下、これを「第二次口頭」と称します。)の 2 以降の項目を、総監については下記 2.2 以降の項目を、それぞれ御覧ください。
(2) べからずの禁
口頭試験にはしてはならないこと(つまり、べからず)が幾つかあります。べからずの詳細については 「第二次口頭」の 7.4 を御覧ください。してはならないと分かっていてもしてしまうのがべからずなので、十分注意する必要があると思われます。
口頭試験不合格の原因としては上記 (1) に次いで多いようです。
(3) 技術者倫理の無知、継続研さんの未実施
総監では試問されませんが、一般部門では技術者倫理、継続研さんについて試問されます。
「技術士試験の概要」の 2 は技術者倫理、継続研さんそれぞれを他から独立した項目として合否判定を行うとしているため、技術者倫理、継続研さん以外が如何に優れていようとも技術者倫理又は継続研さんのどちらか一方でも 60 % 未満であるとそれだけで口頭試験不合格となるので注意が必要です。
口頭試験不合格の原因としては僅かですが希にあるようです。
(4)「コミュニケーション、リーダーシップ」、「評価、マネジメント」の未達
総監では試問されませんが、一般部門では「コミュニケーション、リーダーシップ」、「評価、マネジメント」について試問されます。
「技術士試験の概要」の 2 は「コミュニケーション、リーダーシップ」、「評価、マネジメント」それぞれを他から独立した項目として合否判定を行うとしているため、これら以外が如何に優れていようともこれらのどちらか一方でも 60 % 未満であるとそれだけで口頭試験不合格となります。
ただ、受験者の方からアートプランでお聞きした範囲内では、これらについて厳しい試問を受けたという方はおられません。したがって、一応の準備をしたうえで一般的かつ普通の解答をすれば、これらが原因で不合格になるということはないのではないかと推測されます。
これは、合格するためにはこれらについてどのような知識が必要不可欠であるかを示した文書(つまり、「第二次口頭」の 5.3 に言う「基準文書」)が存在しないことによるのではないかと推測されます。

2. 業務経歴票への対応

2.1 一般部門

2.1.1 業務内容の再記憶
 本項(2.1)では一般部門の業務経歴票への対応について述べます。総監のそれについては 2.2 を御覧ください。
 「技術士試験の概要」の 2 は「口頭試験は、」「業務経歴を踏まえ実施する」としている(2、(2) の項)ので、受験申込書の「勤務先における業務経歴」欄に記入した内容は口頭試験の対象となります。また、ずっと以前の業務については部分的に忘れている可能性があります。したがって、「勤務先における業務経歴」欄に記入した業務の報告書を読み返すなどして、それらの実施期日、業務数量、試験値、設計値、結論、成果、問題点など主な事項をよく思い出しておきます。
 また、上記のようにしてよく思いだしておいても口頭試験当日になって又は前夜に宿泊したホテルにおいて不明点が出てきて不安になることがあるので、必要な資料はできるだけ口頭試験直前まで身近においておくのがよいと思われます。資料はかなりの量になる場合もありますが、試験会場まで持って行かなくても試験会場近くの駅のコインロッカーに入れておくことなども可能です。
2.1.2 経歴説明の練習
(1) 練習の必要性
「勤務先における業務経歴」欄に書いた経歴について説明をするように求められることがあるので、説明の練習をしておきます。この説明については次の (2)〜(6) などに留意するのがよいと思われます。
(2)「勤務先における業務経歴」からの離脱
この説明は「勤務先における業務経歴」欄に記述した経歴を本当に受験者が有しているのかどうかを確認するために行うものですが、受験者の側からすると自分が技術士に相応しいプレゼンテーション能力を有していることを示すよい機会です。欄が 5 つしかないうえに各欄に入力字数制限があるため「勤務先における業務経歴」欄に書けなかったことがたくさんあるはずですので、書けなかったことを十分に付け加えて、術士となるに相応しい業務経歴を有していることを試験委員によく理解して貰うために必要なことを漏れなく説明します。また、「勤務先における業務経歴」欄に記述した文言を離れ、全面的に話し言葉に置き換えて、試験委員が聞いてよく理解できるように説明します。
説明の途中で、試験委員から「それは業務経歴票を見れば分かるから、これまでの経歴をまとめて分かりやすく説明してください。」などと指示があることも予想されるので、そのような指示を想定して説明します。
(3) 迫力の付与
自分が特に留意して取り組んできた事項を中心に述べる、具体的事例、エピソード、感銘を受けたことなどを少しでよいので可能な範囲で盛り込むなどして、説明に迫力を持たせます。
(4) 経歴全体の概括
経歴の全体を簡潔に示すために、「○○年に○○学校○○科を卒業し、同年○○社に入社し」から初めて(もし何らかの理由により「業務内容」欄に入社直後の頃の業務内容を書いてない場合でも、経歴をよく理解して貰うために説明はこのように始めます。)、これまでの技術者としての経歴全体をまとめて述べます。
また、「勤務先における業務経歴」欄は、年数要件を満たしているか否かを計算しやすくするために時系列に沿って記入することを大前提とする表であり、しかも「地位・職名」によって経歴を区分することも求める表ですので、この表に従って経歴を説明するとどうしても時系列と地位・職名に沿った説明になります。しかし、試験委員が知りたいのはそのようなことではなくどのような業務を行ってきたかですので、そこに焦点を当てて説明します。
(5) 業務数量の概括
上記 (4) が済んだ後、それに続けて、「従事期間」の全期間を通算して携わった業務数量を主なものから順に説明します。例えば、「なお、以上述べました業務経歴の全体を通覧すると、「従事期間」の全体を通じて携わった業務は総数で 62 業務です。そのうち主な業務種類の第 1 は山岳トンネルの設計で、主として○年〜○年に、補助担当者又は主担当者として、総数で 8 個の業務を実施しました。総数 62 業務のうちの 8 業務ですので全体の約 13 % にあたります。主な業務種類の第 2 は軟弱地盤の改良設計で、...」のように携わった業務種類別にその数量を説明します。
これは、(4) だけでは「従事期間」の全期間を通じてどのようなことをしたのかが分かりにくいので、これを明確にするために行うものです。「数量」の尺度としては、上記の業務数のほか、所属組織別の業務数量、所属組織別の累計年数なども用いることが可能と思われます。
(4)、(5) の説明を聞いて、試験委員は「なるほど。そういうことか。」と思います。一方、受験者の側から見ると、 (4)、(5) は「これだけの経歴があるのだから技術士資格をよこせ。」という要求明細書の提示です。重点を強調して明確に提示します。
(6) 複数の説明時間の想定
説明のための時間を指定されることがあるのでその指定に柔軟に対応できるように、 説明時間を 1 分、 2 分、 3 分、5 分の 4 ケース程度で練習しておきます。

2.2 総監

2.2.1 キーワードの再記憶
 本項(2.2)では総監の業務経歴票への対応について述べます。一般部門のそれについては 2.1 を御覧ください。
 総監の口頭試験ですから、当然ながら「キーワード集」に示される用語(以下、これを「キーワード」と称します。)がよく頭に入っていなければなりません。しかし、キーワードは、筆記試験直後にはよく覚えていますが口頭試験は筆記試験から 6 カ月も先なのでその頃にはかなり忘れてしまっているはずです。したがって、キーワードについては、問われる以前に自ら進んで用いることができるように、何がキーワードなのかを口頭試験の直前によく覚え直しておくことが大切と思われます。
2.2.2 キーワードの積極的使用
 口頭試験は総監技術士としてふさわしいかどうかを最終的に判断するために行われるものなので、受験者としては、キーワードをよく理解しているかどうかを試験委員から質問される以前に自ら積極的に示す必要があります。これを示すために最も確実なのは適切なキーワードを用いて解答することです。キーワードを用いないでこれを示すことは、不可能ではありませんが多くの労力と時間を要します。適所に適切なキーワードを配置するのがよいと思われます。
2.2.3 業務経歴の説明の練習
 「あなたの業務経歴を総合技術監理の視点から整理して述べてください。」のような質問がなされることがあります。このような質問に備えて、受験申込書の「業務経歴票」に書いた内容を基に次の (ア)、(イ) のようなことに留意して説明文を作成し、要領よく説明できるように練習しておくのがよいと思われます。
(ア) 総合技術監理の視点からの説明
総合技術監理の視点から述べるとは、「総監申込書」の 2.3、(3) と同じように述べるということです。つまり、管理技術別に、キーワードを用いて、やさしく述べるということです。管理技術別に述べるのですから「経済性管理については、...」、「人的資源管理については、...」のように述べます。また、時間的に余裕があれば、例えば経済性管理について述べる場合は、経済性管理全体についてまとめて述べるのではなく、「第 1 に品質管理については、...」、「第 2 に工程管理については、...」のように「キーワード集」の目次の 2 桁見出しの区分と順序に沿って述べ、「キーワード集」の内容をよく理解していることを示します。このように述べるためには、当然ですが、「キーワード集」の見出し構成をよく覚えていなければなりません。 ただ、2 桁見出しの中には自分の専門から見て経歴を述べるうえで必ずしも重要でないものもあります。一般の方の場合であれば、経済性管理のうち「2.2 事業企画と事業計画」、「2.6 計画・管理の数理的手法」などの項は通常はさほど重要ではありません。そのような重要でない 2 桁見出しについては、時間の節約のため、逐一説明するのではなく「その他、事業企画と事業計画、計画・管理の数理的手法などについても、十分留意して業務に取り組んできました。」などのようにさらっと述べるにとどめます。短時間で説明することを求められた場合にも、同様に、いくつかの 2 桁見出しについてはさらっと触れるだけにして時間を短縮します。
(イ) 類似の質問の想定
質問が「あなたの業務経歴を総合技術監理の視点から整理して述べてください。」ではなく、「日常の業務実施に当たってどのようなことに留意して取り組んでいるか、総合技術監理の視点から整理して述べてください。」、「総合技術監理の視点から見て成功した業務と反省すべき業務を 1 例ずつ述べてください。」などの形でなされることがありますが、これらへの解答の仕方も上記とほぼ同様と思われます。
2.2.4 一般部門と共通の事項
 上記 2.2.12.2.3 のほかに、一般部門と共通の事項については 2.1 に記載したのでそちらを御覧ください。

「技術士制度における総合技術監理部門の技術体系」の更新と解説 2019年版

3. 業務詳細への対応

3.1 総監技術士に相応しいことの提示

 本項(3.の項)では総監の業務詳細への対応について述べます。一般部門のそれについては 「第二次口頭」の 3 を御覧ください。
 業務詳細について試験委員から説明を求められることがありますが、この説明にあたっては、業務詳細に記述した成果を上げたのだから総監技術士資格保有者と同等の能力があるということだ、だから総監技術士資格をよこせ、という立場から説明することが大切と思われます。つまり、総合技術監理を既に十分に実施しているということを明確に提示することが大切と思われます。

3.2 自己技量成果の総合技術監理の視点からの説明

 業務詳細の説明は総合技術監理の視点から述べることが大切です。
 しかし、だからと言って、「この業務の実施に当たっては全体最適化に重点的に取り組んだ」、「業務全体を俯瞰して総合的な判断を行った」などと一般論を述べても、それは全く迫力がなく、また試験委員が求めていることでもありません。
 この説明では、自己技量成果(自己技量成果については 「第二次申込書」の 2.2、(3)、(c)、(ア)〜(オ) を御覧ください。)を具体的に説明することが大切です。例えば、(ア)この業務には○○という問題があり事業に大きな影響が予想された、(イ)この問題の根底には○○管理の○○、○○管理の○○というトレードオフの関係にある問題があった、(ウ)これを解決するためには○○の詳細検討(又は、○○試験、○○現地調査、○○利害関係団体との協議など)が必要であると考えこれを実施した、(エ)その結果により、全体最適化の観点から最も根本的解決を要する問題は○○と判断した、(オ)その判断に基づいて○○の対策を実施した、(カ)また、他の問題にも○○、○○などの対策を実施した、(キ)その結果本業務を無事完了した、のように、業務全体を俯瞰した取り組みの過程を具体的に説明することが重要です。そのような取り組みこそが総合技術監理を行った証であり総監技術士に相応しい資質を有していることの証明ですので、取り組んだ過程をあくまで具体的に迫力を持って示すことが重要と思われます。

3.3 完成度高い技術業務の提示

 総監試験の目的はその受験者が総合技術監理を理解し実行しているか否かを確認することなので、5つの管理技術を俯瞰的な見地から駆使して最適化を実施していることを口頭試験においては示す必要があります。これは既に述べたとおりです。
 しかし、総監技術士に実施を求められることは、経理でもなければ労務管理でもなく技術業務です。つまり、総監技術士に求められることは、総合技術監理をよく理解し実行していることではなく技術業務を高い完成度で実行することです。総合技術監理はこの実行のための手段に過ぎません。したがって、その意味では、総監試験の究極の目的は総監以外の技術部門のそれと同一であると思われます。
 したがって、試験委員は、総合技術監理を理解し実行していることは当然の前提であるとして一切問わず、その実行の結果として技術業務をどのように完成度高く実行したのかの明確な提示のみを求める場合があると思われます。その場合にもし総合技術監理を理解し実行していることを示すことのみに解答が終始するならば、逆に合格がおぼつかなくなると思われます。つまり、もし試験委員が技術的内容についてのみ繰り返し質問してきた場合は、解答中に総合技術監理を一切含めないで、総合技術監理を完全に離れて、完成度高い技術業務の内容とそのために行った又は行っている究極の工夫のみを試験委員の質問によく合致した形で明確に提示することが必要と思われます。つまり、口頭試験の流れによっては、3.13.2 に反するように思えるかもしれませんが、技術的内容のみを的確に解答するという臨機の対応が必要と思われます。

3.4 一般部門と共通の事項

 上記のほか、業務詳細への対応については一般部門と共通する事項もたくさんあります。そのような事項については 「第二次口頭」の 3 を御覧ください。

4. 記述式問題答案への対応

4.1 キーワードの再記憶

 本項(4)では総監の記述式問題への対応について述べます。一般部門のそれについては 「第二次口頭」の 4 を御覧ください。
 「技術士試験の概要」の 2 は、口頭試験は「筆記試験における記述式問題の答案及び業務経歴を踏まえ実施する」としています(2、(1) の項)。
 したがって、記述式問題答案は口頭試験の対象となり、択一式問題答案(つまり、キーワードの内容そのもの)は通常は口頭試験の対象となりません。しかし、択一式問題答案について質問された方が極くまれにお見えでありそのような方は例外なく択一式問題の得点が 20 点(50 %)未満のようですので、もし択一式問題の自己採点結果が 20 点(50 %)未満である場合は万一に備えてキーワードの内容を覚え直しておくのがよいと思われます。

技術士試験総合技術監理部門キーワード事典2010年版

4.2総監技術士に相応しいことの積極的提示

4.2.1 口頭試験の性格
 一般に、口頭試験というものは個々の質問に対する解が完全であるかどうかを採点する試験ではなく合格とするに相応しい人物であるかどうかを印象的に判断する試験なので、質問される以前に自ら進んで、自分が合格となるに相応しい資質を有していることを十分に示さなければなりません。
 これは総監の口頭試験においても同じですので、総合技術監理をよく理解し実行していることを問われる前に積極的に提示します。
4.2.2 積極的提示の留意点
(ア) 解答への、対応する管理技術の盛り込み
口頭試験においては「それでは、今から経済性管理について質問します。」というように管理技術を指定しては質問されないので、質問があったらその内容に拘わらず、常に 5 つの管理技術のうちのどれに関連した質問かを判断し総合技術監理の視点から解答することが大切です。
例えば、「この 27.5 kN/cm2 についてはどう思いますか。」という質問があったら、それに対する技術的解答をすると同時に、 5 つの管理技術のどれに関連して質問したのかを判断し、例えばその 27.5 kN/cm2 が安全管理上問題だという意味で質問されているのであれば安全管理に関する意見を、品質管理上問題だという意味で質問されているのであれば品質管理に関する意見を、それぞれ可能な限り付け加えるのがよいと思われます。
(イ) 「キーワード集」の掘り下げ過程の明示
「キーワード集」を掘り下げ、深く学習することは総監技術士に求められる資質の 1 つですので、例えば、 (i) 品質管理に関しては、関連する国際規格である「ISO ○○」を読み、○○に関する先達の詳細な分析に頭が下がった、 (ii) 安全管理に関しては、関連する法律である「○○法律」の全文を今回初めて読み、○○の点が今後の業務実施のたいへん参考となったなど、「キーワード集」の内容を深める努力をしていることを示すことがきればたいへんよいと思われます。多くの方は実際に何らかの文献や法令を直接に紐解いて受験準備をしておられると思いますのでそのような材料は探せばいくらでもあるはずですので、その事実を述べ、掘り下げ過程を明示することが大切と思われます。
(ウ) 総合技術監理の本質を理解していることの提示
総合技術監理の本質を理解していることを自ら積極的に提示することが重要であることは、「総合技術監理部門講座 (3)記述式問題の書き方」の1.4.3、(2) と同様です。
(エ) 「キーワード集」の補足の提示
「キーワード集」は総監技術士が総合技術監理において行うべき内容を示していますが、実際に総合技術監理を十分に行うためには、同書に示されている内容以外にも多くの事項に取り組まなければなりません。例えば、新規人材の獲得、新規組織の立ち上げ、部門間の協力、顧客営業などにも取り組まなければなりません。試験委員もそのことは当然ながらよく分かっていると推測されます。しかし、「キーワード集」はこれらを総合技術監理の重要な項目の 1 つとして取り扱っていません。
しかし、多くの技術者はこのような内容を実際には日常的に行っているはずですので、あくまで口頭試験の流れ中で必要に応じてですが、「キーワード集」が示すもの以外のことも総合技術監理を十分に行うために行っていることを提示することは総合技術監理をよく理解し実行していることを示すために有効であると思われます。

「技術士制度における総合技術監理部門の技術体系」の更新と解説 2019年版

4.3 満点の四方山話による応答

 口頭試験ではまるで四方山話のような突拍子もない質問を受けることがときにあります。このような質問は、少し毛色の違う質問をして総合技術監理の知識・経験に関する実力のほどを確かめようという意図による場合もあると推測されますが、受験者の本質的力量を見ようという意図による場合もあると推測されます。
 3.2、(ア)〜(キ) のようなことは程度の違いはあれ技術者であれば誰もが日常の業務において常に行っていますが、それを高い水準で行うことができるか低い水準でしか行うことができないかはその技術者の問題発生の危険性を事前に洞察する力、発生した問題の最良の解決方法を瞬時に見極める力、新しいものを創造する力、組織を統率する力、人を引きつける人間的魅力など(つまり、1 言で言えばその技術者の本質的力量)に大きく依ることは論を待たないところです。したがって、総合技術監理を高い水準で行うためには自らの本質的力量を向上させることが何より大切であることもまた論を待たないところです。
 したがって、ある技術者を総監に合格させるに相応しいか否かを判定するためには、根本的にはその技術者の本質的力量を判定することが必要です。しかし、現状では総監の筆記試験は総合技術監理に関する知識、経験の判定をもってこの本質的力量の判定に代えており、この辺りは総監の筆記試験が持つ根本的な矛盾です。あるいは、総監に限らず筆記試験一般が持つ根本的な矛盾とも言えます。四方山話のような質問はこの矛盾を少しでも解消して受験者の本質的力量を見極めることによって真に優秀な技術者を合格させようという口頭試験本来の意図でなされる場合もあると推測されます。
 したがって、四方山話のような質問を受けたときには、間髪を入れず瞬時に、本質的力量の問題も十分考慮して、満点の四方山話を返すのがよいと思われます。四方山話に手間取っているようでは総合技術監理など夢のまた夢だと思われかねないので、瞬時に返すことが大切です。また、質問の内容にぴったり合致した四方山話を返すことが大切です。このような場面では、試験委員は解答に示される総監や専門の知識・経験には全く興味がなく唯ただ受験者の本質的力量を見ていると思われます。四方山話の形をした、試験委員との真剣勝負です。

4.4 一般部門と共通の事項

 上記のほか、記述式問題答案への対応については一般部門と共通する事項もたくさんあります。そのような事項については 「第二次口頭」の 4 を御覧ください。

5. 全般的留意点


 総監の口頭試験の留意点のうち一般部門と共通する事項( 「第二次口頭」の 7 )は本ページには記述してありません。しかし、一般部門と共通する事項は本ページと同様に重要ですので、「第二次口頭」の 7 を、必ず、御覧ください。


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